■書 評
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女性同士の争いはなぜ起こるのか
[著者]妙木 忍
青土社
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2730円
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[評者]山下 悦子
(女性史研究家)
■主婦の役割めぐる論争検証
日本の戦後家族の歴史で「主婦」が担ってきた家事、育児、家庭管理、在宅介護、地域活動といった労働は、人生に関(かか)わる、社会経済的にも重要な役割である。市場労働との両立をめぐり「主婦論争」として議論されてきた。著者も「自分の問いを解こうとした」と、若い情熱を注いでいる。 本書の独自性は、主婦が大衆化した一九五五〜七三年にかけて行われた第一−三次主婦論争を再検証したこと、第四−六次の主婦論争を新たに付け加えたことにある。第四次は子連れ出勤の是非が問われたアグネス論争(八七〜八八年)、第五次は専業主婦批判と擁護の対立に見えた石原里紗論や林道義論(九八〜二〇〇二年)、結婚しているか否かで女性を「負け犬」と「勝ち犬」に区分した酒井順子「負け犬論」(〇三〜〇五年)とし、それらを詳細に検証しており、おもしろく読める。 主婦役割・母役割を全面否定する石原論を、第一次主婦論争で妻不要論、主婦役割否定論を展開した梅棹忠夫の再来とみなすのも新視点である(男性の主婦役割否定論と女性のそれを同じ位相で語れるかは疑問だが)。ただ第五、六次の論争を主婦論争として位置づけられるか否か、中産階層崩壊に伴う格差社会での議論として一本化できるのではないか、検討の余地があろう。 というのは、第五次の林の見解はマスメディアで公平に取り上げられず論争には見えなかったこと。また、男女共同参画社会基本法成立以降、「格差の容認と自己責任政策」の小泉政権下で「主婦の構造改革」が学者や官僚主導で行われ、専業主婦・扶養の範囲内で働くパート主婦の存在価値を貶(おとし)める風潮が醸成され、愚劣なまでの主婦否定論や格差論の一環としての負け犬論が自明視される形でマスメディアに流布されたからだ。バブル世代の典型的申し子である石原や酒井の言説に対するいささか高めの評価も気になる点だ。
みょうき・しのぶ 1977年生まれ。東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー。共著に『観光の空間』など。
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