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【特集・連載】

秘密保護法案265人反対 憲・刑法学者ら声明

 憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、それぞれ特定秘密保護法案に反対する声明を発表した。声明に賛成する研究者は憲法・メディア法が百四十人、刑事法が百二十人を超えた。憲法の「知る権利」や「国民主権」を損なう法案の実態が明らかになるにつれ、成立を急ぐ政府とは逆に反対の声が広がっている。

 反対声明は憲法・メディア法と刑事法の研究者が二十八日、国会内で合同で記者会見して発表した。

 憲法・メディア法研究者の声明は呼び掛け人が二十四人、賛同者百十八人の計百四十二人。刑事法は呼び掛け人二十三人、賛同者百人の計百二十三人。

 会見で、憲法・メディア法の呼び掛け人の山内敏弘一橋大名誉教授は「法案は憲法の三つの基本原理である基本的人権、国民主権、平和主義と真っ向から衝突し侵害する」と指摘。刑事法の呼び掛け人代表の村井敏邦一橋大名誉教授は「(軍事機密を守る目的で制定された)戦前の軍機保護法と同じ性格。戦前の影響を考えれば、刑事法学者は絶対反対しなければならない」と呼び掛けた。

 声明はいずれも法案の問題点として、特定秘密を第三者の点検を受けず政府の判断で指定し、漏えいや取得に厳罰を科して、調査活動をする市民や記者も罪に問われる点を挙げた。その上で「国民の『知る権利』を侵害し憲法の国民主権の基盤を失わせ、憲法に基づいて国民が精査すべき平和主義に反している」などと批判した。憲法・メディア法は奥平康弘東京大名誉教授、東北大や東大などで教授を歴任した樋口陽一氏、杉原泰雄一橋大名誉教授、刑事法は斉藤豊治甲南大名誉教授ら研究者が呼び掛け人、賛同者に名を連ねた。

◆声明呼び掛け人(敬称略)

【憲法・メディア法研究者】=24人
愛敬浩二(名古屋大教授) 浦田一郎(明治大教授) 服部孝章(立教大教授)
青井未帆(学習院大教授) 浦部法穂(神戸大名誉教授) 水島朝穂(早大教授)
石村善治(福岡大名誉教授) 奥平康弘(東京大名誉教授) 本秀紀(名古屋大教授)
市川正人(立命館大教授) 小沢隆一(東京慈恵会医科大教授) 森英樹(名古屋大名誉教授)
今関源成(早大教授) 阪口正二郎(一橋大教授) 山内敏弘(一橋大名誉教授)
上田勝美(龍谷大名誉教授) 清水雅彦(日本体育大准教授) 吉田栄司(関西大教授)
右崎正博(独協大教授) 杉原泰雄(一橋大名誉教授) 渡辺治(一橋大名誉教授)
浦田賢治(早大名誉教授) 田島泰彦(上智大教授) 和田進(神戸大名誉教授)
【刑事法研究者】=23人
村井敏邦(代表、一橋大名誉教授) 白取祐司(北海道大教授) 前田朗(東京造形大教授)
斉藤豊治(代表、甲南大名誉教授) 新屋達之(大宮法科大学院大教授) 松宮孝明(立命館大教授)
浅田和茂(立命館大教授) 武内謙治(九州大准教授) 三島聡(大阪市立大教授)
安達光治(立命館大教授) 土井政和(九州大教授) 水谷規男(大阪大教授)
海渡雄一(弁護士) 豊崎七絵(九州大准教授) 守屋克彦(弁護士)
川崎英明(関西学院大教授) 中川孝博(国学院大教授)
葛野尋之(一橋大教授) 新倉修(青山学院大教授)
斎藤司(龍谷大准教授) 渕野貴生(立命館大教授)
佐々木光明(神戸学院大教授) 本庄武(一橋大准教授)

◆特定秘密保護法制定に反対する憲法・メディア法研究者の声明の賛同者
青木宏治 (関東学院大法科大学院教授) 榎澤幸広 (名古屋学院大講師) 川岸令和 (早大教授)
浅川千尋 (天理大教授) 大石泰彦 (青山学院大教授) 菊地洋  (岩手大准教授)
足立英郎 (大阪電気通信大教授) 大久保史郎(立命館大教授) 北川善英 (横浜国立大教授)
荒牧重人 (山梨学院大大学院教授) 大津浩  (成城大教授) 木下智史 (関西大教授)
飯島滋明 (名古屋学院大准教授) 大塚一美 (山梨学院大非常勤講師) 君島東彦 (立命館大教授)
池端忠司 (神奈川大教授) 大藤紀子 (獨協大教授) 清田雄治 (愛知教育大教授)
井口秀作 (愛媛大教授) 大野友也 (鹿児島大准教授) 倉田原志 (立命館大教授)
石川裕一郎(聖学院大准教授) 岡田健一郎(高知大講師) 古関彰一 (獨協大教授)
石塚迅  (山梨大准教授) 岡田信弘 (北海道大教授) 小竹聡  (拓殖大教授)
石村修  (専修大法科大学院教授) 緒方章宏 (日本体育大名誉教授) 後藤登  (大阪学院大教授)
井田洋子 (長崎大教授) 奥田喜道 (跡見学園女子大助教) 小林武  (沖縄大客員教授)
伊藤雅康 (札幌学院大教授) 奥野恒久 (龍谷大教授) 小林直樹 (東京大名誉教授)
稲正樹  (国際基督教大教授) 小栗実  (鹿児島大教員) 小松浩  (立命館大教授)
井端正幸 (沖縄国際大教授) 柏崎敏義 (東京理科大教授) 笹川紀勝 (国際基督教大名誉教授)
浮田哲  (羽衣国際大教授) 加藤一彦 (東京経済大教授) 佐々木弘通(東北大教授)
植野妙実子(中央大教授) 金澤孝  (早大准教授) 笹沼弘志 (静岡大教授)
植松健一 (立命館大教授) 金子匡良 (神奈川大准教授) 佐藤潤一 (大阪産業大准教授)
植村勝慶 (国学院大教授) 上脇博之 (神戸学院大大学院教授) 佐藤信行 (中央大教授)
江原勝行 (岩手大准教授) 河合正雄 (弘前大講師) 澤野義一 (大阪経済法科大教授)
榎透   (専修大准教授) 河上暁弘 (広島市立大講師) 清水睦  (中央大名誉教授)
城野一憲 (早大法学学術院助手) 中島茂樹 (立命館大教授) 前原清隆 (日本福祉大教授)
鈴木眞澄 (龍谷大教授) 永田秀樹 (関西学院大大学院教授) 松田浩  (成城大准教授)
隅野隆徳 (専修大名誉教授) 中村睦男 (北海道大名誉教授) 松原幸恵 (山口大准教授)
芹沢斉  (青山学院大教授) 長峯信彦 (愛知大教授) 丸山重威 (関東学院大前教授)
高作正博 (関西大教授) 成澤孝人 (信州大教授) 宮井清暢 (富山大教授)
高橋利安 (広島修道大教授) 成嶋隆  (獨協大教授) 三宅裕一郎(三重短期大准教授)
高橋洋  (愛知学院大大学院教授) 西原博史 (早大教授) 三輪隆  (埼玉大特別教員・名誉教授)
高見勝利 (上智大法科大学院教授) 丹羽徹  (大阪経済法科大教授) 村田尚紀 (関西大法科大学院教授)
田北康成 (立教大助教) 根森健  (新潟大教授) 元山健  (龍谷大教授)
竹森正孝 (大学教員) 野中俊彦 (法政大名誉教授) 諸根貞夫 (龍谷大教授)
多田一路 (立命館大教授) 濱口晶子 (龍谷大准教授) 森正   (名古屋市立大名誉教授)
只野雅人 (一橋大教授) 韓永學  (北海学園大教授) 山崎英壽 (都留文科大非常勤講師)
館田晶子 (専修大准教授) 樋口陽一 (憲法研究者) 山元一  (慶大教授)
田中祥貴 (信州大准教授) 廣田全男 (横浜市立大教授) 横田耕一 (九州大名誉教授)
寺川史朗 (龍谷大教授) 深瀬忠一 (北海道大名誉教授) 横山宏章 (北九州市立大大学院教授)
戸波江二 (早大大学院教授) 福嶋敏明 (神戸学院大准教授) 吉田善明 (明治大名誉教授)
内藤光博 (専修大教授) 福島力洋 (関西大准教授) 渡辺賢  (大阪市立大学大学院教授)
永井憲一 (法政大名誉教授) 藤野美都子(福島県立医科大教授) 渡辺洋  (神戸学院大教授)
中川律  (宮崎大講師) 船木正文 (大東文化大教員)
中里見博 (徳島大准教授) 古川純  (専修大名誉教授) (27日現在、118人=敬称略)
◆刑事法研究者の声明の賛同者
赤池一将 (龍谷大教授) 京明   (関西学院大准教授) 中村悠人 (東京経済大専任講師)
安里全勝 (山口大前教授) 楠本孝  (三重短期大教授) 鯰越溢弘 (創価大教授)
雨宮敬博 (宮崎産業経営大講師) 黒川亨子 (宇都宮大専任講師) 名和鐡郎 (静岡大名誉教授)
甘利航司 (国学院大准教授) 小浦美保 (岡山商科大准教授) 西岡正樹 (山形大准教授)
荒川雅行 (関西学院大教授) 古川原明子(龍谷大准教授) 新村繁文 (福島大教授)
荒木伸怡 (立教大名誉教授) 後藤昭  (一橋大教授) 比嘉康光 (立正大名誉教授)
伊賀興一 (弁護士) 酒井安行 (青山学院大教授) 玄守道  (龍谷大准教授)
生田勝義 (立命館大名誉教授) 坂本学史 (神戸学院大講師) 平井佐和子(西南学院大准教授)
石塚伸一 (龍谷大教授) 佐川友佳子(香川大准教授) 平川宗信 (中京大教授)
石田倫識 (愛知学院大准教授) 櫻庭総  (山口大専任講師) 福井厚  (京都女子大教授)
伊藤睦  (三重大准教授) 笹倉香奈 (甲南大准教授) 福島至  (龍谷大教授)
稲田朗子 (高知大准教授) 佐藤雅美 (神戸学院大教授) 振津隆行 (金沢大教授)
指宿信  (成城大教授) 島岡まな (大阪大教授) 本田稔  (立命館大教授)
上田寛  (立命館大教授) 白井諭  (大阪経済法科大専任講師) 前田忠弘 (甲南大教授)
上田信太郎(岡山大教授) 鈴木博康 (九州国際大准教授) 前野育三 (関西学院大名誉教授)
植田博  (広島修道大教授) 陶山二郎 (茨城大准教授) 正木祐史 (静岡大教授)
上野達彦 (三重大名誉教授) 関口和徳 (愛媛大准教授) 松岡正章 (弁護士)
内田博文 (神戸学院大教授) 高内寿夫 (国学院大教授) 松倉治代 (大阪市立大准教授)
内山真由美(佐賀大准教授) 高倉新喜 (山形大准教授) 松本英俊 (駒沢大教授)
梅田豊  (愛知学院大教授) 高田昭正 (立命館大教授) 丸山泰弘 (立正大専任講師)
岡田行雄 (熊本大教授) 高平奇恵 (九州大助教) 光藤景皎 (大阪市立大名誉教授)
岡本勝  (東北大名誉教授) 武田誠  (国学院大教授) 緑大輔  (北海道大准教授)
大出良知 (東京経済大教授) 田中輝和 (東北学院大名誉教授) 三宅孝之 (島根大名誉教授)
大藪志保子(久留米大准教授) 田淵浩二 (九州大教授) 宮本弘典 (関東学院大教授)
大山弘  (神戸学院大教授) 丹治初彦 (弁護士) 村岡啓一 (一橋大教授)
小田中聰樹(東北大名誉教授) 恒光徹  (大阪市立大教授) 森尾亮  (久留米大教授)
春日勉  (神戸学院大教授) 寺中誠  (東京経済大非常勤講師) 森下弘  (立命館大教授)
門田成人 (広島大教授) 徳永光  (独協大教授) 森久智江 (立命館大准教授)
金澤真理 (大阪市立大教授) 冨田真  (東北学院大教授) 森本益之 (大阪大名誉教授)
神山敏雄 (岡山大名誉教授) 内藤大海 (熊本大准教授) 山田直子 (関西学院大教授)
嘉門優  (立命館大准教授) 永井善之 (金沢大教授) 山名京子 (関西大教授)
金尚均  (龍谷大教授) 中島洋樹 (関西大准教授) 吉村真性 (九州国際大准教授)
※ほかに氏名未公表の賛同者4人 (25日現在、100人=敬称略)


【秘密保護法案に反対 声明要旨】

◇国民主権を形骸化 憲法・メディア法研究者

 法案には憲法の基本原理に照らして看過しがたい重大な問題点があると考える。

 一 取材・報道の自由、国民の知る権利などさまざまな人権を侵害する

 重要で広範な国の情報が行政機関の一存で特定秘密とされることにより、国民の知る権利が制約される危険が生じる。また、公務員などが萎縮することにより情報提供が狭められ、漏えいへの教唆や取得なども犯罪として処罰されることで、取材活動や市民の調査活動が厳しく制限され、報道の自由や市民の知る権利が不当に侵害されかねない。

 法案には、「報道の自由に十分配慮する」との規定も置かれているが、この種の配慮規定により、法案の危険性を本質的に取り除くことはできない。

 このほか、法案は、秘密を取り扱う者に対する適性評価制度を導入しようとしているが、これは個人のプライバシーを広範囲に侵害するもので、内部告発の抑止にもつながりかねない。

 また、秘密とされる範囲は広範囲に及び、かつ、漏えい等が禁止される事項も抽象的に書かれており、処罰の範囲も不明確であり、憲法三一条が要求する適正手続きの保障に反する疑いも強い。

 二 憲法の国民主権の原理に反する

 法案が提示しているのは、国民主権の前提に反して、防衛、外交、有害活動防止やテロ防止など国民が大きな影響を受ける重要な情報について、その入手、取材、伝達、報道、意見交換がさまざまな形で制限される仕組みとなっている。これでは、国民主権が拠(よ)って立つ基盤そのものが失われてしまうことになろう。

 また、法案が制定されることになれば、国会議員の調査活動や議院の国政調査権なども制限を受ける可能性が高く、国民主権の原理はますます形骸化されてしまいかねない。

 三 憲法の平和主義の原理に反する

 法案は、防衛に関する事項を別表で広く詳細に列記し、関連の特定有害活動やテロ防止活動に関する事項も含め、これらの情報を広く国民の目から遠ざけてしまうことになる。しかも、法案により、現在の自衛隊法により指定されている「防衛秘密」はそのまま「特定秘密」に指定されたものと見なされ、懲役も倍化されるという乱暴なやり方が取られている。

 政府は、安全保障政策の司令塔の役割を担う日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案とともに法案の制定を図ろうとしている。法案は、想定される武力の行使を見越して秘密保護をはかろうとするものだ。その背後には、日米の情報共有の進展を踏まえた秘密保護強化の要請がある。

◇人権侵害のおそれ 刑事法研究者

 法案は、基本的には一種の軍事立法であり、平和主義、国民主権原理、基本的人権の尊重主義といった憲法の基本原理を脅かし、憲法「改正」の先取りでもある。同時に、刑事法の人権保障をも侵害するおそれが大きいと言わざるを得ない。

 一 法案の罰則は罪刑法定主義に反し、憲法三一条違反である

 特定秘密保護法の罰則は、文言が曖昧であり、処罰範囲は広汎(こうはん)であって、憲法三一条の適正手続き・罪刑法定主義に反する。

 罪刑法定主義は、犯罪と刑罰が国会の制定する法律によらなければならないとするもので、政府が刑罰法規を定めることは基本的人権と議会制民主主義の見地から許されない。

 この法案の特定秘密はそもそもきわめて広範囲であり、具体的な内容は行政機関の長が決定する。このような罰則は、刑法による保護の対象を事実上行政機関の決定に広範に委任するという意味で、それ自体罪刑法定主義の趣旨に反する。

 処罰の類型も秘密漏えいを中心に、特定秘密の取得行為、独立教唆・扇動、共謀にまで及び、過失による漏えいの処罰も含まれており、悪(あ)しき完全主義に陥っている。

 ささいな行き過ぎを口実に、報道機関の取材や住民運動の側の調査活動は規制の対象とされ、活動を萎縮させるおそれが大きい。

 二 刑事裁判における適正手続きを侵害する

 罰則に違反して起訴された場合、裁判官や弁護人に秘密の内容を開示することは認められないおそれがある。その結果、「特定秘密」の内容が裁判官に対してさえ明らかにされないまま審理され、有罪とされることになろう。裁判の公開の制限や、尋問・論告・弁論が制限されるおそれも無視できない。

 弁護人の活動が特定秘密の取得行為あるいは共謀罪、独立教唆・扇動罪あるいは未遂罪に当たるとして、処罰される可能性がある。被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利が著しく制限される。

 三 報道機関への配慮規定は問題を解決しない

 法案は報道・取材に対する配慮規定といわゆる「免責」規定をおいている。これらの条文はメディアをなだめることを意図している。しかし、懲役十年を覚悟して、秘密の情報をメディアに提供する人はほとんどいない。濫用(らんよう)禁止規定が人権侵害に対して効果的な歯止めとなるかは、過去の類似の規定を持つ法律等の運用から見て疑わしい。

 

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