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【探訪 都の企業】

<第1部>【3】ヤマグチ(町田市木曽東) 地域灯す家電マン

2008年4月2日

来店客に商品を説明する「ヤマグチ」の山口勉社長(左)

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 東京都町田市内の団地をシマウマ柄の営業車が走る。周辺でこの車を知らない人は少ない。家電販売店ヤマグチ。昨年末、薄型テレビの販売累計が一万台を超えた。年商十二億円。松下電器産業系列の電器店で日本一の販売台数だ。

 「かゆいところに手が届くではない。かゆくなる前にサービスを」。山口勉社長(65)は約五十人の社員にいつもこう説いている。

 同社のウリは家電販売だけではない。「旅行中、うちの犬にえさをやってくれませんか」。無理難題とも思える顧客の電話にも営業車で駆けつける。

 山口社長は言う。「昔は隣近所でみそやしょうゆの貸し借りをしてた。その感覚です」

 顧客には団地住まいの高齢者が多く、“ご用聞き”のニーズは多い。電球が切れれば取り付けに出向き、説明書を読んでも分からないと言われれば飛んでいく。本業と関係ない場合、わずかな謝礼をもらうこともあるが、無料サービスが原則だ。地域と高齢者に優しく。営業マンが顧客宅を回るのは一日百件に及ぶ。

 ご用聞きは顧客の信頼はもちろん、営業力も向上させた。顧客宅によく出入りするため、どの家電が買い替え時期か分かる。その部屋に合ったテレビのサイズを伝えられる。ヤマグチは近隣の大手量販店に比べ値段が高めだが、売れる。

 アフターサービスも抜かりない。冷蔵庫が壊れれば、クーラーボックスに氷を詰めて駆けつける。「壊れた製品より、まずお客さんの壊れた気持ちを直さなきゃ」と山口社長。近くに住む高橋春義さん(66)は「サービスも込みで買うと思えば量販店より安い」と話す。

 一連のサービスは、十二年前の「経営危機」から生まれた。量販店が相次いで進出し、車で十分ほどの半径約二キロの中に大手中堅計五店がひしめいた。

 安売り合戦では資本力に勝る大手に太刀打ちできない。ほかにはない特徴を出さなければ。顧客には高齢者や家電にあまり詳しくない普通の家庭が多い。「ならば遠い親せきより近くのヤマグチと言われるように」。ご用聞きビジネスの始まりだった。

 経営危機から十数年、約四百五十平方メートルの小さな店は、今日も顧客でにぎわう。この間、周辺の量販店は三店が撤退した。山口社長は笑う。「特徴をつくれば、地域が生き残らせてくれる」

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■地域への思い

 「自宅の近くに、町田市の南西部を東西に走る尾根緑道というのがあるんです。この季節、緑道沿いに広がる桜並木を見ると、この辺に住んで良かったなあと思える。高台の展望広場から丹沢の山並みを眺めると、いい気晴らしになる。天気がよければ富士山が見渡せて最高の気分。夜景もきれいです」

  (山口社長)

 

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