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【探訪 都の企業】

<第2部>【1】亀屋商店(目黒区下目黒) 食守る“地域の主婦”

2008年4月28日

食材にこだわって作った総菜コーナーの前に立つ亀屋商店の藤森太郎社長(左)と娘婿の谷田部公宗さん

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 駅から歩いて十五分以上。駐車スペースは二、三台で、売り場面積も六十坪足らず。周囲にはチェーンの大型店がいくつもある。不利な条件ばかりに囲まれた目黒区の食品スーパー「亀屋」。だが平日の昼下がりでも、客足は絶えない。

 「うちは本物を売ってるからね。分かってくれるお客さんに買い支えられているんだ」。藤森太郎社長(56)は自慢げだ。偽装品が出回り、今でこそ注目される「食の安全」に、ずっと前からこだわり続けてきた。

 祖父、父と受け継がれてきた酒店を食品スーパーに拡大。バブル期には、店舗をシックな店構えに改装し、総菜コーナーをつくった。

 当初は、「おしゃれっぽいものを並べておけばいいんだろう」と考えていた。だが他店のように業務用食材ばかりを仕入れて売りさばくスタイルに、疑問を感じ始めた。「量販品にはなぜ添加物や着色料が多いのか。それは、大きな売り場で大量に長く流通させるため。うちのような店がやることではないと思った」と藤森社長。

 卵なら親鶏の育て方を直接見るために北陸まで足を運ぶ。調味料のみりんは酒としても飲める品質を求める。とにかく原材料にこだわり続けた。

 「売れ残りを恐れるからこそ消費期限偽装のような問題が起こる。期限が近づいた食品は、自分のところで加工すればいい」。せっかくの食品を生かしたいという思いが高じ、八年前には近所にハム・ソーセージの加工場を自前で建設。無添加の商品を販売し始めた。

 ヒレカツ一枚四百円、具四種のみそ汁一杯百二十円…。こだわりの結果、総菜売り場に並ぶ値札は少々割高になったが、質と安全性の高さは確かだ。

 それが、大型店との差別化につながり、亀屋は地元を中心に根強い顧客を持ち続けている。

 ただ住民の高齢化は、この地域でも大きな悩みだ。藤森社長は「長年、うちの味に親しんでくれたお客さんは、足腰が弱ったからといって、コンビニでは満足できないだろう」とみる。外出のままならない常連には、総菜の弁当一食でも配達をしている。

 「うちの役割は“地域の主婦”。だから“家族”には安心して食べられるものしか出したくない」。こだわりの源は地域愛でもある。

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■地域への思い

 「曾祖父が長野県から上京し、祖父が大正期に今の土地で創業した。この辺りは、もともと目黒競馬場(1933年廃止)の敷地内で、バス停などに元競馬場前という名が残っている。今は、目黒通り沿いにインテリアショップが立ち並ぶおしゃれな地区になった。店は娘婿=谷田部公宗専務(30)=が継いでくれる。この地域で代々商売が続けられて幸せだ」 (藤森社長)

 

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