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【探訪 都の企業】

<第2部>【3】細渕電球(荒川区西日暮里) 最先端の光技つなぐ

2008年5月1日

電球の寿命試験をチェックする細渕電球の高橋建志代表取締役

写真

 一九五四(昭和二十九)年。東京大学外科チームは世界で初めて胃壁のカラー撮影に成功した。この時、カメラの先端に付けられたのが細渕電球の超小型ランプだった。同社の技術が一躍有名になった出来事だ。

 当時から、特注品の電球を手作業でつくってきた。内視鏡や検眼鏡など医療機器、工業用計測器や米鉄道会社の信号機、たこ焼きを保温する熱源…。その種類は二千にも及ぶ。

 仕事場では、壁側に向いた職人たちがピンセットを片手に黙々と作業をこなしている。フィラメント(光を放つ線)の折り曲げやガラス成形と筒内の真空化、ガラス球と金属の接合。誤差〇・一ミリ以内の精密さが求められる。工程によっては職歴三十年以上のベテランが技巧を駆使する。

 検眼鏡用電球で国内シェア80%を占めるなど、同社は電球業界ではトップ企業。しかし高い技術がゆえの悩みがある。技の継承だ。

 十年、二十年かけて身につける熟練の世界。「百人面接しても、器用で我慢強い人材が見つからなかったことがある」。細渕修社長の娘婿で三代目の高橋建志代表取締役(46)は語る。

 さらに、迫り来る難局が地球温暖化対策に端を発した“脱白熱電球”の動きだ。甘利明経済産業相は四月上旬、二〇一二年をめどに家庭で使う白熱電球を、消費電力が少ない蛍光灯に切り替えることを産業界に要請した。

 特注品が専門の同社の需要に直接的な影響は少ないとされる。だが高橋代表は「大手が生産を中止すれば、ガラス管や金属部品などの材料が入手できなくなる」と不安げだ。

 同じ照明装置でも発光ダイオード(LED)は出力が弱く、蛍光灯では小型化が難しい。特に引き合いが多い医療機器向けでは、血液の色を鮮やかに映すには小型で高出力の電球が必要だ。

 悩みは尽きないが、高橋代表は着実に布石を打つ。昨年八月から独自開発した手術用ヘッドランプの販売を開始。この春には理工系の大学院を出た新人も入社した。高橋代表は「これからの職人は研究者、開発者の役もこなしてほしい。サッカー日本代表のオシム前監督が言うポリバレント(複数のポジションをこなせる能力)がいよいよ必要になる」と力を込めた。

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■地域への思い

 「創業は1938(昭和13)年、今の北区だった。戦後、文京区、台東区を経て84年、荒川区に移った。両隣のメッキ工場、風呂・トイレ関連工場がなくなるなど、町工場は減る一方。代わりにマンションが建ち、残されたわれわれは四面楚歌(そか)だ。でも頑張って仕事を続ければ地域貢献になる。子供向けに電球教室や見学会も開いている」

  (高橋代表取締役)

 

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