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【探訪 都の企業】

<信金編>【1】亀有信用金庫(葛飾区亀有) 老舗の危機 地域と支え

2008年6月28日

地域企業の再生について話す亀有信用金庫の矢沢孝太郎理事長

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 「経営の将来性、経営者の資質を見極める。その結果、融資を引き揚げたこともある」。亀有信用金庫(かめしん)の矢沢孝太郎理事長(45)は地域のバンカーとして、常にぎりぎりの判断を迫られている。

 創業二百二十九年の老舗料亭「川千家(かわちや)」は、江戸川のほとり、柴又帝釈天(葛飾区柴又)の参道にある。今でこそ、ウナギ料理を中心に人気を集める川千家も“ぎりぎりの判断”の対象になったことがある。

 二〇〇三年。川千家は経営破綻(はたん)のふちに追い込まれていた。「十二億円の負債を、月々一万円ずつ返済するのが限界でした」。当時専務だった天宮久嘉現社長(38)は静かに振り返る。バブル期、巨額投資で店舗を増改築。だがバブルの崩壊と官官接待の廃止、企業の工場撤退が経営悪化に追い打ちをかけた。バブル絶頂期に十億円規模だった年間売上高は一気に三分の二にまで落ち込んだ。

 保有する近隣の土地を売却して返済に回したが焼け石に水だった。宴席会場の和室を閉め、仲居さんや和食の調理人を解雇した。映画「男はつらいよ」にも登場した老舗料亭の経営危機のうわさは町中に広がった。

 矢沢理事長は「川千家は売却だ」と決断しかかった。だが、同時に、かめしんが川千家をつぶすのか救うのかをじっと見る地域の目も感じていた。

 「『冷たいかめしん』と呼ばれるかもしれない」。「しかし、金融機関としての損失はどうする」。その板挟みに頭を痛めた。

 そんな中、地域が動いた。川千家に地元の町内会や消防団などが「天ぷらぐらい出せるだろう」と次々に予約を入れ始めた。

 かめしんはこの動きに注目した。矢沢理事長は「二百年以上続いた力が地域に生きている。何十年先を見据えた判断をしよう」と大きくかじを切った。国内でも初の信金主体のシンジケートローン五億二千万円を、メーンバンクのかめしんと周辺の三信金でつくり、再生に動きだした。

 矢沢理事長は「経営者が別の借り入れを隠したため、融資判断を間違った経験もある」と明かした上でいう。難しい判断を迫られたとき、支えになるのは「地域の声です」。

   ◇

 石原慎太郎都知事の肝いりで発足した新銀行東京の経営危機は、地域金融の難しさを浮き彫りにした。地域を支えつつ、時には厳しい決断も行う。「情」と「ビジネス」に揺れる“都の信金”を探訪した。

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■地域への思い

 信金の近くの商店街を歩くと、知り合いの年配商店主らが親しげに声をかけてくる。子どものころ、通学路だった。こうなると、理事長も担当者もない付き合いだと思う。柴又を元気づけようと、学生に携帯電話で写真を撮ってもらうイベントもやった。今、若者は街を面白がっている。地域活性化に向けたヒントとして若者の意識をどう活用するか考えている。 (矢沢理事長)

 

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