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【探訪 都の企業】

<信金編>【1】東京シティ信金(中央区日本橋室町) “潜入戦略”で融資先再生

2008年10月2日

 東京シティの高橋正義副部長(50)は、出向先で自ら実施した社内アンケートの内容を読んで驚いた。

 「ある部長は自家用車のガソリンを経費で請求している」「高い価格で仕入れキックバックをもらっている幹部が複数いる」…。

 東京シティは二〇〇七年から「要注意先」の融資企業に職員を出向させる戦略を打ち出した。財務諸表に表れない企業実態の調査が目的だった。

 〇七年一月、高橋氏は都内の従業員二百人程度の製造業者に財務統括部長として一人で“入社”。実はその直前、会社経営陣には「今回協力がなければ“延命措置”はしない」と通告してあった。出向後、事実上内部告発を促すアンケートを実施した。毎月、赤字を垂れ流す企業体質を変えるためだった。

 高橋氏は「内容は一件ずつすべて裏を取った」と明かす。ガソリン代の不正流用をめぐっては、高橋氏はこの部長が経理に出したガソリンスタンドの領収書を丹念に調べた。領収書には車のナンバーが刻印されており、車の使用記録と照らし合わせた。「工場と本社の往復だけでは使い切れないほどの回数を給油していた」

 キックバックを受け取っていたのは役員、部長、課長の三人。独自に仕入れを行い裏金をもらっていた。伝票や納品書を突き合わせルートを解明した。

 高橋氏は調査結果を幹部に突きつけた。「改めなければ社は再生しない。融資もできない」。ただ直接当事者に当たることはしなかった。高橋氏は「経営陣と社員に危機意識を共有してもらうことが最大のテーマだった。辞めさせるのが目的ではない」と話す。ただ会議の場で「今後繰り返せば、厳重に対処する」とだけ言った。今年三月、潜入捜査官のような高橋氏の生活は終わった。この間、出向先の交際費などの出費が前年度比で約二千七百万円減り、決算も黒字転換した。

 東京シティの木津定三審査部長は「うちは、この会社のメーンバンクだった。大口貸出先だからこそ、再生に向けここまで時間をかけて丁寧にできた」と話す。融資先の経営悪化は、信金自体の命取りになりかねない。“潜入”戦略は、地域企業と共生しながらも、冷徹にマネーの供給先を模索する信金の実像でもある。

   ◇

 世界的な金融危機が加速する中、都の信用金庫は地域企業にマネーを供給し続けている。だが審査を一歩誤れば自らの経営基盤を失いかねない。融資先を厳しくみつめる信金マンの姿を追った。

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■地域への思い

 金融市場の混乱が世界を覆っているが、信金としてあくまでも地域の中小零細企業への貸し出しを原点として取り組んできた。国内の景気が停滞感を強めている。大手行から見放される企業が今後出てくるだろう。そのときにブランド力はないが、スーパーマーケットのように身近にある金融機関として、貸し出しを進められれば、ピンチもチャンスに変わると思っている。 =小池誠一理事長(70)

 

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