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【探訪 都の企業】

<続・信金編>【2】目黒信金(目黒区中目黒) 半径500メートル以内で小口融資

2008年10月3日

秋の交通安全運動で、地域の人たちと交流する目黒信金の伊藤昌明理事長(右)

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 若者が住みたい街として常に名前が挙がる東京・中目黒。駅周辺には、しゃれた店や飲食店が並ぶ。この洗練された街で、目黒信金は徹底した“どぶ板”を貫く。

 数年前、板金工場を営む顧客が高級宅地化が進むこの地域を去り、神奈川県内に工場を移した。当時、経営者の表情はさえなかった。融資担当が話を聞いた。すると工場移転費用の借り入れ以外に、複数の消費者金融から「借金があるんだよ」と告白した。さらに仲がこじれた妻から必要以上の養育費や慰謝料を要求され、資金繰りに窮していた。

 工場には日替わりで取り立て屋が来ていた。融資担当は経営者に言った。「工場は身の丈に合わせて狭くしてください。妻とはきっちり別れてください」

 「すべてのむなら、消費者金融の借金は全部うちが持ちます」

 だが取り立てにおびえる経営者は、目黒信金にも疑念を抱いていた。「金貸しは信用できない。うまいこと言ってだます気か」

 この時、地域の輪が生きた。経営者の高校時代の同窓生が目黒信金にいた。融資担当者と一緒に「助ける」と説得した。一緒に消費者金融を回って借金を返した。これ以上金を借りないよう消費者金融のカードも三人ではさみで切った。

 多重債務を抱える男性の更生を手伝ったこともある。家族にも相談できず、膨らんだ借金は数千万円。だが、長年の顧客だったため借金を肩代わりした。

 いずれも個別融資先として不適格と判断してもよさそうな案件。しかし「半分くらい焦げ付いても構わない。のるかそるか」と同信金の伊藤昌明理事長(61)は笑う。

 「甘い融資」にみえるが、実はあるルールに基づく。顧客は本支店の半径五百メートル以内に絞る。小口融資が基本。五億円以上の融資はしない。

 伊藤理事長は「歩ける範囲なら、近所の評判でその人の懐具合が分かる。小口融資で分散すれば、焦げ付いてもこちらのダメージは少ない」と説く。手の届く範囲の顧客に限って融資することで、リスクを最小化した。目黒信金の不良債権比率は3%台と低い。

 伊藤理事長は言う。「赤字だってまじめに返済する人はいる。その人たちの笑顔がみられるなら、信金マン冥利(みょうり)に尽きる」

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■地域への思い

 近所を歩くと「あのとき、目黒さんだけが貸してくれた」と話しかけてくれるのがうれしい。融資はあら探しではいけない。いいところを探して伸ばしてあげること。そうしてこの街の生活を少なからず安定させてきた思いがある。うちの職員も、地域のみなさんに大変お世話になっている。これからも100パーセント地域に貢献していきたい。 (伊藤理事長)

 

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