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【探訪 都の企業】

<続・信金編>【3】東京三協信金(新宿区高田馬場) 経営指南と融資で救済

2008年10月5日

店舗の前で融資部の中島久喜部長(右)と話す東京三協信金の鳴海克実理事長=東京都新宿区高田馬場で

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 菓子職人の父を失った東京・多摩地区にあるカステラ店。三姉妹の末っ子が後を継いだが、働いても働いても赤字は膨らむ。

 東京三協信用金庫(新宿区)は昨年、この店に無担保で三百五十万円の融資を決めた。「通常なら融資できる水準ではない。正直、戻ってこないのではと怖かった」。同信金融資部の遠藤雅久副部長(48)は、決断を苦笑いで振り返る。

 やみくもに融資を決めたわけではなかった。「赤字が膨らむ理由を突き止められたからです。そこを改善すれば、うまくいくと思った」と遠藤副部長。

 カステラ店で、初代である父が亡くなったのは数年前。庭の柿の木から落ちる不慮の事故だった。

 当初は長女が後を継いだが、不幸は続き、直後に病死した。遠くに嫁いだ次女を飛び越え、突然店を継いだ三女は、商店経営の素人だった。

 「カステラの味はお母さんが守っていた。でも、経営の方は三女の勘次第という状態だった」と遠藤副部長。帳簿を見ると、売り上げが伸びているものの、赤字も激増していた。

 原因は、父が亡くなった後、カステラを大量に卸すようになった取引先の存在だった。その取引は、売り上げ全体の三分の一を占めてはいたが、赤字もほぼ同じ額だけ出していた。納入先の言い値で大量のカステラをつくって卸していた。三女は店の危機を救おうと必死だったが、いくらで卸せばどれぐらいの利益が上がるという計算ができなかった。

 遠藤副部長らは、この取引先との業務関係を断つよう説得。三女らは当初「売り上げが減ってしまう」と戸惑いを見せたが、利益が上がる仕組みを丹念に説明し、説き伏せた。

 カステラ店は今年に入り、赤字を大幅に減らすことに成功した。遠藤副部長は「父の残した店を、何としても残そうという思いが、取引先を切るという勇気につながった。これが融資を決断した理由です」と話す。

 融資部の中島久喜部長(49)は、適正な融資を支えるのは“考動力”と訴える。「例えば取引先の事業所に行ったら、ホワイトボードが今後の仕事予定でどれだけ埋まっているか、従業員の顔ぶれがひんぱんに変わっていないか、チェックする。自ら動いて考える。地域での融資の基本です」

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■地域への思い

 高田馬場周辺は、昔は鮮魚店や花店などいろいろな個人商店があって良い取引先だった。ただ、都市開発の波で多くが店を畳んで、そこをテナントビルにする不動産賃貸業に転身した。だから最近、不動産業界で突然、倒産するケースが相次いでいることが心配だ。大手行などが融資姿勢を厳しくする中、信金の真価が問われる状況だと思っている。=鳴海克実理事長(64)

 

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