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【探訪 都の企業】

<続・信金編>【4】小松川信金(江戸川区平井) 『提案型』でNPO融資

2008年10月6日

地域とのかかわりについて話す小松川信用金庫の羽下博理事長(右)と小杉義明理事

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 利益を生み出すことを主たる目的としない組織への融資は妥当か。下町を地盤とする小松川信金が突き付けられた命題だった。

 同信金は四年前、民間非営利団体(NPO)が江戸川区内に計画した、独り暮らしの高齢者向けグループホーム建設をめぐる融資を打診された。すでに他の金融機関が融資を断った案件だった。信金内でもNPOへの融資に意見が分かれた。

 同ホーム「ほっと館」の設立メンバーの一人は「担保もなく次々融資を断られた。わらにもすがる思いで融資をお願いした」と振り返る。

 ホーム側から事業計画を見せられた同信金が注目したのは、ホームによる資金集めのための私募債だった。設立メンバーは「この私募債が目標額の三千四百万円に達したら融資するという条件を、信金側から出されました」と説明する。

 最終的に、担保がないにもかかわらず同信金は五千万円を融資した。総事業費約一億二千万円の四割以上を占める大きな貸し出しだった。

 決断の理由について同信金の小杉義明理事(52)は「ホームに賛同した地元住民が目標を上回る三千六百万円を引き受けた。ホームが地域と共存できる計画だと感じた」と説明する。地域ネットワークが“担保”として融資した形だ。

 私募債は一口五万円。地元では独り暮らしの高齢者が増加する中、同ホームへの理解が深かった。しかも、債券なので当然ながら、金利も付く。地域のお年寄り支援とビジネス感覚が合体して動きだした計画に、信金側も「成功の可能性を見いだした」という。

 設立された「ほっと館」内には、ホーム直営のレストランも開業。さらに病院も入りテナント料が入ることになった。

 現在、ホームはレストランとテナント料により、お年寄りからの入居費だけに頼らない収益構造ができたという。

 小杉理事は「担保もなく、数字だけなら融資を断っていたかもしれない。だが、地域に溶け込んだ計画だったのを評価した。その後、資金の回収は順調です」と自慢げだ。

 さらに「はい、ご融資できませんという姿勢ではなく、ここを乗り越えてほしいという提案型融資で地域の可能性を広げていきたい」と意気込んでいる。

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■地域への思い

 生まれも育ちも本部のある江戸川区平井周辺。東京オリンピックのころまでは、麦などの畑ばかりの土地だった。今は郊外のショッピングモールなども発達し、地元の商店街も寂れてしまった。しかし、高齢者が車の運転ができなくなり、近場の店を必要とする時代も必ず来る。その時までに地域の活力を少しでも保っていくのが信金の大きな役割だと思っている。 =羽下博理事長(67)

 

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