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【探訪 都の企業】

<続・信金編>【5】朝日信金(台東区台東) 現場に出向き融資見極め

2008年10月7日

積極的な融資姿勢を打ち出す朝日信金と小林一雄理事長(コラージュ)

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 朝日信金の貸出先は約四万七千社の中小零細企業だ。一社平均の融資額は二千四百万円と小口に特化しているのが特徴。二〇〇四年度から〇七年度までに増やした新規貸出先は一万三千社以上、二千七百億円と融資先の開拓にも積極的だ。

 だが今年春、その積極性が裏目に出た。

 東京都内のソフトウエア開発会社。大手行がメーンバンクだったが〇七年、同信金の営業担当が飛び込みで融資を獲得した。

 決算を調査すると、年間売上高は五十億円を超えていた。利益も上げている。経営者は“カリスマ”としてソフト業界で名を知られていた。

 最終的に融資の決め手となったのは、納税証明書の存在だった。一億円の納税が証明されていた。利益が上がっている証拠ともいえる。だから同信金の雨宮泰博常務理事(64)は「問題はない」と判断し、数億円規模で融資することを決めた。

 ところが、今年春になって突然、返済が滞った。あらためて決算書を調査すると粉飾決算だった。利益はなく、税金は別の金融機関からの融資を“原資”に納付されていた。経営者も逃げてしまい融資は完全に焦げ付いた。

 融資を納税に流用して納税証明書をつくり、その信用で新たな巨額融資を受ける。当時、同信金を含め十以上の金融機関がこの会社に融資していたが、この手口にだれも気づかなかった。

 金融機関をだまそうとする経営者を見破れるか。最後は一人一人の信金マンの洞察力にかかっている。雨宮氏は「このケースは完全にだまされた。やはり何度も企業に足を運んで、在庫の動き方や社員の意欲など、ささいな変化にも敏感にならなければ」と反省の弁を語った。その上で雨宮氏は「融資依頼を受けた小さな企業の社有車が欧州ブランドの超高級外車だったことがあった。こういう場合、『社有車としてふさわしいのだろうか』と疑問が浮かぶ」と現場での印象の大切さを力説する。

 同信金の小林一雄理事長(66)は「経営者になろうという人物は見えを張る傾向がある。だから、過剰な設備を買ったり、最後には粉飾に走ったりするケースも少なくない。まず現場で常識的に判断ができるかどうか。それが大事」と信金マンの心得を話している。

  =おわり

  (この連載は、斉場保伸、杉藤貴浩、石川智規が担当しました)

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■地域への思い

 私は現場からのたたき上げ。荒川区の支店に勤務していた新人時代、プラスチックの成型や鉄板のプレス工場などの町工場を一つずつ自転車で訪ねて融資をまとめていった。昭和40年代、高度成長期で融資の要望は多く、休む間もなかった。その中で、金融を通じて地域の経済を育てることを学んだのだと思っている。 (小林理事長)

 

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