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【探訪 都の企業】

<奮闘編>【5】ミュージックセキュリティーズ(千代田区丸の内) 伝統ファンドで支え

2009年1月10日

神亀酒造の小川原良征さん(左)とミュージックセキュリティーズの小松真実社長

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 次世代に伝統産業を残すためのファンドをつくれないか。こんな思いから、ミュージックセキュリティーズが運営する「全量純米酒ファンド」は生まれた。投資対象は、不動産でも債券でもない。米とこうじと水だけでつくる純米酒の製造事業だ。

 「資金不足で継承の危機にさらされている文化や産業は少なくない」。同社の証券化事業担当の猪尾愛隆取締役(31)はファンド立ち上げの動機を語る。さらに「今まで流れなかったところに、資金を流そうという仕組みでもある」という。

 同社は二〇〇一年、小松真実社長(33)が大学卒業後間もなく設立した。拠点を構えるのは、ビジネスマンが行き交う丸の内。社名の由来でもある新人ミュージシャン育成事業を通じて、丸の内エリアでのライブを企画するなど、街の活性化にも力を注いできた。

 音楽ファンドの実績を重ねた同社が、金融機関を通じて酒蔵の課題を知ったのは〇七年。純米酒は米などの原価が高い一方、数年間の熟成期間を要するものもあり、資金回収に時間がかかる。実績がない酒蔵は資金調達が難しく、倒産に追い込まれたり、純米酒づくりを断念するケースもあるという。

 小松社長は純米酒製造の継承に力を注ぐ神亀酒造(埼玉県蓮田市)の小川原良征専務(61)に話を聞き、信頼関係を築きながら全量純米酒ファンドの実現にこぎつけた。小川原専務は「こういうファンドが早くあれば仲間が消えずにすんだかもしれない」と話す。

 これまでに募集したファンド三本は、インターネット上で日本酒ファンなどの個人を対象に呼びかけ、一口五万円と小口での出資を可能にした。その結果、約九百人から約五千万円を集めた。小松社長は「利益第一でなく、約八割の人が事業への共感を理由に投資を決めているのが特徴」と分析する。

 年末年始は、新たに兵庫県姫路市の酒蔵の純米酒づくりを対象とした「奥播磨ファンド」を募集。出資者には売り上げに応じた分配金や製品(純米酒)を配る。蔵見学会も設けて投資対象と触れ合う仕組みも築いた。

 同社の収益はファンド総額の約5%。早ければ二−三年後の上場を目指している。ただ金融危機による実体経済の悪化は深刻だ。小松社長は「影響は今のところ感じない」というが、投資心理の低迷は業績に直結する。「ファンドの意義をしっかりと伝え、共感してくれる個人投資家層を広げる努力をしたい」と気を引き締めている。 =おわり

 (この連載は、荒間一弘、桐山純平、村上豊、斉場保伸、坂田奈央が担当しました)

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■地域への思い

 「丸の内はライブを開けば集まるビジネスマン層がいて、投資家も多くいる日本でもまれなエリア。ビジネスチャンスが多く、ここを拠点にしてから仕事が随分しやすくなった。おしゃれなショッピングビルが充実する一方で、すぐそばにある皇居に出入りする馬車を目にすることもあって、日本の伝統文化も感じられる場所。この地域を盛り上げる活動に積極的に取り組み続けたい」 

 (小松社長)

 

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