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【探訪 都の企業】

<おくりびと編>【1】トライウォール(千代田区永田町) エコ棺で緑に恩返し

2009年7月1日

段ボール製の棺の前で話すトライウォールの鈴木雄二社長=東京都千代田区で(安江実撮影)

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 エコカー支援や家電のエコポイントが消費刺激効果を上げる中、エコが最期の時にも「選択肢」の一つになろうとしている。

 東京都千代田区の梱包(こんぽう)材メーカー「トライウォール」は、段ボール製の棺(ひつぎ)「エコフィン」の販売を二年前から始めた。段ボールにレーヨン製の布を張ったエコフィンは高級感や温かみもあり、知らなければ段ボール製とは思わない仕上がりだ。

 強度も二百キロまで耐えることが可能で、防水加工も施されている。重量は、十五キロと従来の合板製と比べ半分程度になる。

 エコの面では、製造時に使用する木材消費量が合板製のほぼ半分で資源を節約できる。

 さらに火葬時の燃料消費量も棺だけなら合板製の半分程度。この結果、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)といったガスの排出量を三分の一に削減できるという。

 同社が異業種ともいえる棺の製造を始めたきっかけは、二十年以上前にさかのぼる。鈴木雄二社長(66)は当時、割りばしが環境問題として取り上げられていたことを目の当たりにした。そこで鈴木社長は「燃やしてしまうのは棺おけも同じ。将来は木が燃やせなくなるのではないか」と考えたという。

 次第にCO2排出量などが社会問題化していく中、二〇〇七年にエコフィンを発売した。すでに約四百社の葬儀社に約二千本を納め、〇九年は三千本程度を見込んでいる。

 エコフィン事業を始めた際、鈴木社長が決めたことは「これは普通の事業とは違う。亡くなった人の尊厳を生かしたい」。鈴木社長は、一棺につきモンゴルで十本の植林をする仕組みを導入。亡くなった後、新しい木々が芽生え、さらにその木が人々の役に立つというシステムだ。

 エコフィンの納入先で、葬儀関連サービスなどを行う「生活クラブ総合サービス」では「利用者の八割がエコフィンを選んでいる。『環境にいいものを葬儀で使えてよかった』という声も聞かれる」と話す。首都圏などに葬祭場を展開する公益社でも「首都圏ではかなりの割合で選ぶ人がいる」と証言する。

 「最期の社会貢献にと選ぶ方もいる」とトライウォールの担当者。

 エコフィンの浸透は「エコ葬儀」という新しい葬儀ビジネスを生み出そうとしている。

    ◇

 日本経済を覆う暗雲はいまだ晴れず、政権選択のための総選挙が近づく。騒然とした雰囲気の中でも“おくりびと”たちは、静かに仕事を続けている。最期の時の演出に携わる「都の企業」を探訪した。

■大切な人へおくる言葉

 会社の立ち上げなど公私にわたって長年付き合ってきたオーストラリア人の男性が今年6月に72歳で亡くなった。同業でビジネスを教えてくれた人。私の妻が病気になったときも助けてくれ、家族ぐるみでの付き合いだった。もう少し生きて仕事を教えてもらいたかった。彼の残した巨大な事業が無事に次の世代に継承されることを願っている。(鈴木社長)

 

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