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【探訪 都の企業】

<おくりびと編>【3】光潮社(新宿区新宿) 自然な笑顔 生前撮影

2009年8月11日

遺影用写真を撮影する女性とそれを見守る堀社長(中)=東京都新宿区で(川北真三撮影)

写真

 「はい、ニコッと。いいですね。次はワッハッハといきましょう」。シャッターが切られ、次の瞬間ストロボが光る。

 東京都新宿区の伊勢丹百貨店にある写真館「光潮社」。スタジオで撮影しているのは記念写真や証明写真ではない。自身の葬儀で使うための遺影だ。カメラマンからの要望に、撮影されている女性(67)=中野区在住=は、照れながらも笑顔で応える。遺影写真といっても硬い表情はどこにもない。撮影料は一万五百円でプリント代が五千二百五十円(四つ切りサイズ)。

 この女性は撮影した理由について、「万が一のとき、子どもたちに迷惑をかけないよう、お寺の準備などと一緒にやっておこうと思いました」と話す。

 数年前、中野区をおそった豪雨被害で多くの写真が水でだめになった。このため夫が亡くなった際、遺影を決めるのに苦労したことも背中を押した。

 縁起でもないと、遺影の生前撮影に否定的な人は多い。だが、「徐々に変わってきている」と光潮社の堀恵介社長(55)は話す。

 以前なら家族写真を撮影するついでに、息子らから「遺影用を一枚撮っておいてほしい」と内緒で頼まれることが多かった。しかし、最近では自ら「遺影用に」と前もって言われるケースが増えてきたという。

 笑顔の写真を撮るのは「その人らしい生き生きとした顔を残すため」(堀社長)。芸能人や有名人と違い、一般の人々は自然な表情の写真が少ない。だからこそ、後に子孫に見てもらうための一枚が必要と考えている。もっと多くの人に気軽に利用してもらおうと、現在作成中のちらしには「生前遺影」の言葉を盛り込む予定。老人ホームへの出張撮影も始める。

 堀社長は、東京都写真館協会の理事長も務める。生前撮影を広げるため、同協会所属の写真館仲間たちと写真展などのキャンペーンも計画中。少子化の影響や大手写真館の台頭で、技術がありながら苦戦している写真館も増えてきている。こうした中、腕の見せ所をもう一度、取り戻したいという現実もある。

 堀社長は「遺影写真は撮っておいて絶対損のないもの」と力説する。いつかは必要になる一枚。自分らしい姿を残しておきたいと願う人は、少なくないはずだ。

■大切な人へおくる言葉

 10年ほど闘病し、3年前に亡くなった先代の社長でもある父。葬儀の時には闘病前の写真を使うことになったが、違和感なく参列者は受け入れてくれた。私とは対照的に、心配性で、こまやかな人だった。だから、いつも最悪の場合を想定し、私が羽目を外すのではないかと心配してくれていた。今は「とりあえず頑張っている、心配ないよ」と伝えたい。(堀社長)

 

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