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【探訪 都の企業】

<おくりびと編>【5】キーパーズ(大田区大森本町) 最期の引っ越しサポート

2009年8月13日

依頼を受け遺品を整理する担当者=神奈川県内で

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 使い込まれたコンロや冷蔵庫、仏壇…。これらの家財道具を利用していた主は、もうこの世にはいない。遺品整理サービス業者「キーパーズ」東京支店(大田区)の倉庫には、供養や処分を待つ、さまざまな家財道具がひっそりと置かれている。

 もともと運送会社を営んでいた吉田太一社長(45)がキーパーズ(本社・愛知県刈谷市)として事業を開始したのは二〇〇二年秋。以前、請け負った引っ越しの中に、遺品の形見分けに伴う家具の移送があり、荷物の処分に手間取る遺族を目の当たりにしたことがきっかけになった。

 遺族から寄せられる依頼のほとんどは、故人が一人暮らしだったケースだ。平均的な遺品の量は2Kほどの住まいなら二トン車一台分程度になる。思い出を振り返りながら、家族が仕事の合間に片付けるとなると負担は大きい。

 吉田社長は「地方の場合、近所付き合いもあるので手伝ってくれる人もいるが、都会では難しい」といい、東京支店への依頼が全体の半数を占める。作業は遺品の梱包(こんぽう)や室内の清掃のほか、写真や人形といった故人の思い入れの強い品の供養にも及ぶ。「これは残していた方がいいですよ」と遺族に形見にするよう勧めるケースもある。

 作業は2Kほどの間取りなら、二十五万〜三十万円程度が平均的な料金。利用者からは「そこまでしてもらえるとは思わなかった」「途方に暮れていたので助かった」との声が寄せられるという。

 吉田社長は「遺品は、故人と一緒の時間を過ごしており、生きざまがそのまま残っている」という。事業を始めたころは、「やはり遺品整理は遺族がした方がいいのではないか」と考え、続けていくことを迷ったという。しかし、困っている遺族を助けるという気持ちで事業を継続。パンフレットには「天国へのお引っ越しのお手伝い」とした。

 最近では死後を不安に感じ、問い合わせてくる生前相談も多い。吉田社長は「本来は遺族がやることが理想。本当に必要な人だけが使えばいい」と謙虚に語り、あくまでもサポートビジネスであることを強調する。だが、高齢者世帯が増える中、“最期の引っ越し”への依頼は確実に増えており、同社をモデルにした映画化の話も進行中という。 =おわり

 (この連載は、経済部・木村留美が担当しました)

■大切な人へおくる言葉

 亡くなった祖母をはじめ、先祖に対し、今ここに私が存在していることを感謝したい。ただ、何かを語りかけたり、守ってほしいと頼んだりすることはしない。人はみな死に同じ道をたどるのだから。ただ、しっかり仕事をしているか(亡くなった人に)見られていると思っており、お盆を自分がちゃんと生きているか見直すきっかけにしている。(吉田社長)

 

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