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【探訪 都の企業】

<信金編>【上】多摩信用金庫(立川市曙町) 再生の願い実現へ指南

2010年5月2日

「地域の発展と共に歩む信金を目指す」と語る多摩信用金庫の佐藤浩二理事長=東京都立川市で(梅津忠之撮影)

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 「主人が人生の最期をいい形で迎えることができたのは、本当に信金さんのおかげなんです」

 一年半前に夫を亡くした妻(58)は、涙を浮かべながら語り始めた。立川市内で、三十六年前に夫と開業した雑貨屋を営む。ワイングラス、時計、キーホルダー…。店内にはさまざまな品物が並ぶ。

 五年前、店は長い不況の波にのまれた。商売を広げすぎて負債が膨らみ、取引先の大手銀行から整理回収機構に債権が移された。厳しく返済を迫られる日々が続いた。「八方ふさがりで、どうしていいか分からなかった。どん底でした」。妻は振り返る。

 わらをもつかむ思いで夫が電話した先は、地域活動で知り合った多摩信用金庫の佐藤浩二理事長(67)だった。それまで取引はなかった。しかし佐藤理事長は「すぐに理事長室に来なさい」。面談から数時間後には、担当者が店に駆けつけた。

 当時、夫は病を患っていた。その姿は佐藤理事長の心にも強く残っている。「“自分が生きているうちに店を再生させ、子どもたちに残したい”という強い思いを感じた」。信金側は中小企業診断士らを派遣して経営指導する一方、借り換えで債権を引き受けた。

 妻は「信金のみなさんは、うちの店が立ち直るため、もう不思議な感覚になるくらい、親身にやってくれた」と話す。

 店は再生の道を歩み始め、長男(32)が後を引き継いだ。見届けた夫は六十一歳で他界した。長男は「助けてもらえたからには、自分も頑張らないと」と心に決める。

 「地元の企業が困った時にこそ、手を差し伸べるのが信金だ」。佐藤理事長は言い切る。多摩信金は二〇〇六年、価値創造事業部を創設した。融資だけでなく、企業が抱える課題を解決し再生を目指す取り組みに力を入れるためだ。社員約二千人のうち百四十人を投入し、中小企業の経営指南を行っている。

 佐藤理事長は語る。「経営者が本気になれば、会社は良くなると信じている。本音で話し合い、どうしたらよいか一緒に考えることが信金の役目だ」

   ◇  ◇

 企業業績が回復しているという。だが、大半の中小企業は依然、苦しい。そのセーフティーネットになっているのが信用金庫だ。都の企業を支え続ける信金を紹介する。

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■地域への思い

 多摩地域は緑が多く、水に恵まれ、公園など都市インフラもある。最先端技術を持つ中小企業も多く、日本社会の縮図のようだ。最近は地元に住む人が定着して、よりいい場所になってきた。その中で、われわれにできるのは「幸せをつくる」こと。お金を貸すのは、企業が良くなるため。企業が元気でいてくれないと、地域も良くならないですから。(佐藤理事長)

 

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