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【探訪 都の企業】

<デフレ奮闘編>【上】居酒屋・テラケン(江東区亀戸) 清貧(中野区本町) 『均一』『自炊』お客応援

2010年7月18日

つまみを自ら料理するお客さんと語らう居酒屋「清貧」の“おやじさん”(左奥)=東京都中野区本町で(藤原進一撮影)

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 西新橋。午後七時。居酒屋「にこにこ屋」はサラリーマン客で満員だ。刺し身、空揚げ、にぎりずし(五貫)、生ビール…。居酒屋の定番メニューがすべて二百五十円均一。これが特徴だ。

 “二百五十円均一”は昨年十一月誕生し、都内を中心に二十店舗以上に増えた。実は、運営する「テラケン」(江東区亀戸)は、海産物居酒屋「さくら水産」も全国展開している。だが金融危機後、関西発の“二百八十円均一”に客を奪われた。

 同社の寺島宏取締役は「ついに均一時代が来たと感じた。だから、さくら水産の一部を二百五十円均一に転換させた」と振り返る。

 仕入れ先と粘り強く交渉する。調理場での下ごしらえを強化し、注文から配膳(はいぜん)までの時間をカット。注文内容は紙に記入してもらう。徹底したコスト削減策が安さの源泉だ。

 寺島取締役は「団塊の世代が定年を迎え、需要は減る一方だ。安売り合戦は続く」と話す。だが「安いだけではだめだ」とも。「超低価格」と「質」という矛盾したテーマに挑戦する構えだ。

 日本フードサービス協会によると、「パブレストラン・居酒屋」の二〇〇九年売上高は前年比5・8%減、客数も4・9%減。逆風の中、均一をさらに超えた自炊型居酒屋「清貧」(中野区本町)が昨年七月開店した。

 店には肉、野菜、卵などが酒と一緒に並ぶ。客は食材を選び自分で調理して食べる。ご飯は茶わん一杯九十九円でチャーハンにしてもそのまま食べても自由。食材についた値段を、首から下げたカードに客が張り付けて会計する仕組み。

 客単価は三千円前後といい、会社の同期五人と来店した男性(23)は「料理しながらコミュニケーションが深まる」と満足げだ。

 店を取り仕切る通称“おやじさん”は「まあ、ここは居酒屋というより遊び場だな」と説明する。

 炊事場の入り口にある食材一覧表をみると、チーズだけで十五種類。鍋料理向けに、客ごとの名札がついた“マイ・ガスボンベ”もある。

 “おやじさん”は「過剰サービスが当たり前の時代に自分でつくる大切さを若い人に学んでほしい」という。さらに「料理を頑張る人は安さを勝ち取れるが、工夫しない人には高くつく。頑張る客を応援するんだ。単なる安売り店じゃない」と主張する。

 「均一」、そして「自炊」。底なしのデフレに「都の居酒屋」が限界に挑みながら向き合っている。

  ◇    ◇

 日銀が経済成長率を上方修正し、大企業の決算も復調気味だ。しかし、経済指標を無視するようにデフレは根を張る。小売りの最前線で、価格の止めどない低下と格闘する「都の企業」を紹介する。

 

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