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【探訪 都の企業】

<デフレ奮闘編>【中】アベルネット(台東区上野) “わけあり”逆手に活路

2010年7月19日

輸送時に破損した箱の商品を安く販売するアベルネットの今井浩和部長=東京都台東区で

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 「箱に穴があいていたら三千円引きます」。東京・秋葉原。家電ネット通販「PCボンバー」の店舗兼倉庫には、「箱破損」のシールがはられた家電商品が並ぶ。これらの“わけあり”家電が、インターネット上で人気を集めている。

 “わけ”は商品自体ではなく箱にある。「このかすり傷は千円引きですね」。同店を運営するアベルネット(台東区上野)の今井浩和事業部長が、破損レベルごとに決めた値引きルールに従って、念入りに商品に目を配る。

 サービスは「わけありくん」という。二〇〇八年八月、インターネット上に専用コーナーを設けた。きっかけは「箱に傷が付いている」という客からのクレームだった。

 今井部長は「商品自体に問題がなくても、消費者は箱のかすり傷やへこみに敏感です。店頭渡しなら気にならない傷でも、ネット通販の場合、とりわけ消費者の目が厳しくなる」と話す。

 値引きルールの内容は、かすり傷の場合は「A」、大きなへこみがあると「B」、穴があいていれば「C」の三段階だ。新品価格が十万円以下の商品なら、それぞれ千円、二千円、三千円値引きする仕組みだ。

 この商品を入れる箱に的を絞ったわけあり作戦は、口コミで人気が広がった。同社の売上高は、導入前より三割以上増え、値引きで削った利幅を十分カバーしているという。

 同店は、メーカー取次店や量販店を通じ、“わけあり”や型が古くなった商品を仕入れている。このため値引き前の販売価格自体が、すでに量販店より四割程度安い。今井部長は「箱に傷があるなど安さの理由をはっきりさせていることが、むしろ安心感につながっている。激安店の“安かろう悪かろう”というイメージも払しょくした」と満足げだ。

 実は、似たような販売戦略を大手百貨店も始めている。

 松坂屋上野店は六月中旬の一週間、食品の「理由(わけ)ありセール」を初めて実施した。賞味期限まで余裕があるのに、販売しなくなった商品が対象。初回投入量は千種類四十万点で、缶詰や油、ワインが三〜七割安。催事場は連日、多くの客でごったがえした。

 上妻正直バイヤーは「お客さまが納得して買うのなら、いいじゃないかという原点に立ち返った。毎日、掘り出し物があるから来店促進につながる」と話す。同店は十一月にも「理由あり…」を実施する。小さな都の企業が成功させた作戦が、デフレに苦悩する流通業界に広がっている。

 

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