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【探訪 都の企業】

<デフレ奮闘編>【下】ディ&デパートメント(世田谷区奥沢) 60年代の薫り詰め込み

2010年7月20日

60ビジョンで生み出された家具が並ぶディ&デパートメントの店内=東京都世田谷区奥沢で

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 「60(ろくまる)ビジョン」。一九六〇年代の「シンプル」で「飽きない」デザインにこだわる異業種プロジェクトだ。

 仕掛け人の一人でデザイン会社、ディ&デパートメント(世田谷区奥沢)の松添みつこ副社長(36)は、創業二年目の二〇〇〇年、新しく自社ビル内に開店するカフェのいすを探しまわっていた。その際、中古店で六〇年代に製造された「いす」に出会った。

 松添さんは「衰えない魅力を感じた」と振り返る。作り手は愛知の大手家具メーカー「カリモク」だった。同社に問い合わせると、そのいすは、すでに生産停止寸前の状態となっていた。

 メーカー側に「共同で、いすの生産と販売を手掛けるビジネスをやりたい」と提案し続けた。二年後、たまたま雑誌で取り上げられたカフェ内の「いす」の写真に対し、読者からの問い合わせが相次いだ。これがメーカーを動かし、共同作業が始まった。

 さらに、この動きが六〇年代の薫りをたっぷり染みこませた家具を中心とした生活用品を生産・販売する「60ビジョン」へと発展した。

 60ビジョンへの参加条件は▽創業三十年以上▽ロングセラー商品を自社内で育てる意志があること−。現在は賛同企業が十二社、生み出した商品も六百を超えた。

 なぜ六〇年代にこだわるのか。

 松添さんは「六〇年代は日本のものづくりが、一番熱かった時代だと思う」という。さらに「あの時代、『メード・イン・ジャパン』の基準となる製品が生み出されていった。創造者の思いが詰まった、時代に流されないデザインが次々と出た」という。

 一方、「企業の技術を結集して作った原点ともいえる商品が、八〇年代の大量消費時代につぶされた。型や技術も海外に流出した。今は何を作りたいのかが見えない」と批判する。

 60ビジョンでは、企画段階から各社の独自の歴史を意識しながら、“製品の原点”に返る努力を重ねる。例えば創業百三十八年の家庭用品メーカー、マーナ(東京都墨田区)は、一度生産停止にした真っ白で溝のないシンプルな風呂場のいすを再生産。現在、五千四十円とやや高めながら、贈答品としても人気を集め安定的に売れている。

 照明器具、食器、スーツケース…。60ビジョンを通じ、再び送り出された家具などは、〇九年の売上高を前年より約20%伸ばし、デフレ時代の消費低迷を“裏切り”続けている。

 (この連載は、経済部・坂田奈央が担当しました)

 

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