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【探訪 都の企業】

<信金編>【中】世田谷信用金庫(世田谷区世田谷) 悩み寄り添う相談会

2010年11月28日

相談窓口を設けている世田谷信金玉川支店=東京都世田谷区で(安江実撮影)

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 「“重症”になってから相談に来る人が多い。誰にも言えずに一人で悩んだ末、わらをもつかむ思いで来るんですね」。世田谷信用金庫の渋井和夫常勤理事(60)は振り返る。

 同信金玉川支店内のコンサルティングプラザ玉川が、月一〜二回のペースで開催する法律相談会。ここに持ち込まれる相談は、ローンの借り換えから相続争いまでさまざまだ。常駐の社会保険労務士やファイナンシャルプランナーに、提携している弁護士も加わり、踏み込んだ内容の相談に応じる。

 人に知られたくない内容の相談も少なくない。渋井氏は「集金に回る営業担当者が、顧客との何げない会話から深刻な悩みを引き出すケースが多い」と話す。

 今年一月、相談に来た七十代の女性もその一人だ。女性は相続争いで悩んでいた。亡き夫の親から代々続く商店とその土地を譲り受けたが、夫の三人の兄弟らから計五千百万円を請求され、「途方に暮れておられた」という。

 女性は銀行に相談を持ち掛けたが、築四十年の建物を担保にした融資には限度があり、「難しい」と断られた。四年にわたる裁判でも和解に至らず、残された道は、土地や建物を競売に掛けるしかなかった。

 渋井氏は「売ってしまいなさいというのは簡単だった。でも、代々の土地と商店を残したいという思いを第一に考えた」と振り返る。信金側は、複数の建築会社に改装や建て替えの見積もりを依頼。十数回にわたる話し合いを通じ、改築して一部をアパートとして貸し、家賃収入を前提に通常の枠を倍以上超えた十八年の長期返済計画で七千万円を融資する結論を出した。

 「高齢化が進む中、今後もこういった相続に絡む相談が増えるはず。それを受け止める機能と場所が必要となる」と渋井氏。スタートから二年目に入った法律相談会も、地域に浸透しつつある。

 これまでに対応してきた相談件数は百件を超える。融資に結び付くケースばかりではない。しかし、「地域の金融機関として、われわれは逃げられない立場にある。最後の最後まで一緒にやっていくしかない」。地元の活性化のため、顧客の人生に寄り添いながら信金ビジネスは続いていく。

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◆地域への思い

 世田谷地域には、400年以上の歴史を持つ伝統行事がある。この承継など、地元に根差した活動を大切に考え、町会や商店街とともに地域づくりに携わってきた。個人事業主や住民の高齢化が進む中、事業承継や相続など世代交代に絡む相談も増えている。身近な存在として、そして地元と運命を共にする信金として、“オーダーメード”の対応に努めていく。 (大場信秀理事長)

 

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