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【探訪 都の企業】

<韓流編>【下】CJメディアジャパン(港区) 日本産 韓流番組ヒット

2010年12月28日

日本生まれの韓流番組への思いを語るCJメディアジャパンのベ・ヒョンチャン社長=東京都港区西新橋で

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 東京都文京区のJCBホール。CS放送「スカパー!」で最も人気を集めた作品を選ぶ式典で、チャンネル「Mnet(エムネット)」の番組「INNOCENT WORLD〜パク・ヨンハ アフリカの旅」という作品が大賞に選ばれた。番組制作の中核を担ったCJメディアジャパンのベ・ヒョンチャン社長(53)は「この賞を天国にいるパク・ヨンハさんにささげます」と述べた。

 「アフリカの旅」は、今年六月に急逝した韓流スター、パクさんが二〇〇九年夏にアフリカのチャドに行き、現地の子どもたちと交流しながら奉仕活動をする模様を収めた番組。パクさんは訪問を機にチャリティー活動を始め、その募金を現地に寄付した。

 ジャパン社は、Mnetを運営する韓国最大の総合メディア会社、CJメディアの日本法人。「アフリカの旅」はジャパン社の日本人スタッフがアイデアを出して完成させた“日本生まれの韓流番組”で、所有権もジャパン社にある。

 ジャパン社は〇五年に設立。ドラマ、音楽など韓流番組をMnetを通じて流し、今年の国内加入世帯数は前年同期比8・7%増の十万人に達した。〇九年の売上高は三十億円で、〇六年から黒字決算と好調な経営を続けている。

 日本発の番組を作ったのは、日本のファンをより引きつけるためだ。「アフリカの旅」のようなドキュメンタリーは、韓流スターに密着し、私生活での顔も垣間見ることができるため「日本人好み」(ベ社長)と分析している。

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 今、ベ社長が目指しているのは番組の「現地化」だ。「日本のファンの好みは、日本人スタッフが一番知っている。これからは日本発番組の比重を拡大する」と意気込む。意識するのは約四兆円規模とされる日本の放送市場でのビジネス拡大だ。現在、一つしか持たない有料チャンネルは今後拡大する方針。音楽や映画など、ジャンルごとにチャンネルを分けることも検討している。

 さらにベ社長は「日本発の韓流番組をアジア各国にも輸出する計画を練っている」という。「文化の“貿易”は、お互いの国のレベルや地位を高め、関係も改善させる。その一翼を担いたい」と思いを語る。

 (この連載は、経済部の上田融が担当しました)

        ◇ ◇ ◇

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◆慶大大学院メディアデザイン研究科教授 中村伊知哉氏に聞く

 アニメ、ゲーム、音楽 業界つなぎ海外発信を

 韓流ブームの背景には、ドラマや音楽を海外に発信する韓国の国家戦略がある。日本もアニメやゲーム、ビジュアル系バンドが海外で評価を受けながら、ビジネス化が遅れている。原因や対策について、内閣官房の知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会長も務める、中村伊知哉慶大大学院メディアデザイン研究科教授に聞いた。 

 −韓流の成功の理由は。

 「(放送、音楽などの)コンテンツ業界と政府の明確な意思だ。韓国は国内市場が小さいので海外市場を最初から狙った。力を入れる対象も音楽やドラマに絞った。そこに政府が強力に支援した。一方、日本は八方美人的。『能、歌舞伎からJ−POP、映画、芸能、マンガもある』という支援の仕方だ。韓国方式は見習うべきものがある」

 −日本のコンテンツ輸出に必要な施策は。

 「支援対象の集中や(総務省や経済産業省に分かれている)縦割り官庁の集約だ。本気度も問題だ。文化輸出を遊びじゃなくて本気でやろうという気がどこまであるのか。韓国は金大中政権以来、政治のリーダーシップでやってきた」

 −日本は政府が資金を出すべきか。

 「そうは思わない。政府は、人材育成や技術開発といった基本的な支援をやる方がいい。あまり支援金を出すのは向かない。競争力の弱い人が集まってしまう」

 −民間サイドの対応は。

 「業界を横断的につなげることだ。例えばアニメを海外に発信する時、音楽業界が主題歌を売りライブ会場でファッション業界がコスプレを売る。食品業界はそこに絡めたお菓子を作る。パッケージ型でコンテンツを作るといい。ただ、今はそれをつなぐプロデューサー的な人材がいないのが問題点だ」

 −コンテンツ普及はなぜ重要なのか。

 「一つは産業面だ。コンテンツビジネスは派生するファッションとか食とか観光とかおもちゃとか、周辺が大きい。全部あわせると百兆円ビジネスといわれる。もう一つは文化面だ。平和で愉快で面白い国と思われれば、相手国に好かれる。私のところの留学生の大半は日本のアニメやゲームに憧れて来日した。こうした力をもっと生かすべきだ」

 なかむら・いちや 京大経済学部卒。84年郵政省(現総務省)入省。98年、米MITメディアラボ客員教授、02年スタンフォード日本センター研究所長、06年から慶大大学院教授。49歳。

 

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