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【探訪 都の企業】

<東京ロケット編>【中】川邑研究所(目黒区目黒) 地道な宇宙潤滑剤

2011年10月12日

「はやぶさ」の模型を前に、潤滑剤を塗った試作品を手にする川邑正広社長=東京都目黒区で(木口慎子撮影)

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 「惑星探査機『はやぶさ』に御社の製品を使った。表彰したい」

 昨年末、NECや三菱重工業といった大企業とともに、従業員三十人の企業に政府から連絡が入った。東京都目黒区の「川邑(かわむら)研究所」。川邑正広社長(49)は「驚いた」と振り返る。

 二〇〇三年五月に打ち上げられ、小惑星「イトカワ」の微粒子が入ったカプセルを地球に届けたはやぶさ。開発時は正式名称の「ミューゼスC」と呼ばれ、はやぶさの呼称が一般的になったのは打ち上げ後だ。川邑社長は連絡があるまで自社の潤滑剤使用に「気付かなかった」と笑う。

 カメラや自動車エンジンのピストン部分など、部品がこすれ合う場所を滑りやすくするのが潤滑剤。はやぶさでは、自家発電のための太陽光を得るパネルなどを指す「太陽電池パドル」の一部で使われた。具体的にはパネルの開閉の際に動かす関節部分「リンク機構」など。スプレーで吹き付けて乾かし関節部分を動きやすくする。

 潤滑剤は鉱物の二硫化モリブデンなどを粉末化しさまざまな物質と配合、樹脂に練り込み作った液体だ。潤滑油が使いにくい高温や低温の空間で使え、宇宙でも蒸発しない。

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 では、地球より宇宙に適した潤滑剤はどう作ったのか。川邑社長は「詳しくは(企業秘密で)言えない」としつつも「(摩擦を抑える)フッ素樹脂は使うが、湿気が多いと滑りにくくなる黒鉛は使用しない」などと説明。その上で「物質の配合は料理で食材を選び出しどう組み合わせて調理するかと同じ。祖父、父、私の三代で培った経験が強みになった」と付け加えた。

 ライバル数社との競争の上、一九九四年に打ち上げられた純国産のH2ロケット1号機に潤滑剤を納入して以降、国産ロケットや人工衛星に潤滑剤を提供し続けてきた。「強さ」の理由について川邑社長は「過去の研究を参考にした最小限の試作品づくりで、速やかに商品を納入してきたことなどが評価された」とみる。

 はやぶさを題材にした映画は今月一日に公開され、今後も二本が上映される見込みだ。

 注目は高まる一方だが、川邑社長は「潤滑剤はうまくいって当たり前。話題にならない方が大成功。宇宙の仕事でも与えられた課題を解決していくだけ」と謙虚に話す。

 

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