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【探訪 都の企業】

<東京ロケット編>【下】宇宙でホカホカご飯 尾西食品(港区三田)

2011年10月13日

開発した宇宙食の「アルファ米」を手にする尾西食品の伊藤秀朗さん=東京都港区で(河口貞史撮影)

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 「故郷の味を宇宙に届けることができた」。東京都港区にある非常食製造の尾西(おにし)食品。開発部チーフリーダーの伊藤秀朗さん(43)は二年前、宇宙飛行士の若田光一さんが、自社のご飯を国際宇宙ステーション(ISS)で食べる映像を見た時の感動を語る。

 尾西食品の「アルファ米」の宇宙食は、炊いたご飯を急速に乾燥させてポリ袋に入れ、真空パックにした「いわば干し飯」(伊藤さん)。お湯に浸すとほかほかのご飯に戻り、白飯、赤飯のほか「おにぎり鮭(さけ)」「山菜おこわ」の四種類がある。

 保存食市場では、無菌室で炊いて包装したご飯を電子レンジで温める「無菌米飯」が主流だ。従業員七十人の尾西食品が製造したアルファ米が大手メーカーの製品を抑え、ISS内の宇宙食に選ばれたのはなぜか。

 伊藤さんは「水分が少なく腐敗しないため、長く保存できることや『軽さ』が評価された」と話す。茶わん一杯分のご飯を乾燥させた商品は約六十グラム。重さは同じ条件の無菌米飯の半分以下だ。宇宙飛行士は多くの物をISSに持ち込むため、軽さは重要になる。

 だが、伊藤さんはそれだけで満足しなかった。「おいしく食べられる製品に仕上げたかった」のだ。

 無重力の宇宙では、体内の水分が下半身にとどまりにくい。影響で上半身の血管は膨らみ、鼻詰まりで味覚が鈍くなることもある。伊藤さんはご飯をパサパサした食感にする成分「アミロース」に着目。うるち米よりアミロースの含有率が低いコメを使い、かみ応えがあって甘みが強い宇宙食に仕上げた。

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 ISSでは加水用ノズルから百ミリリットルのお湯を注ぎ、三十分かけてご飯に戻す。おにぎり鮭のご飯を食べた若田さんは「おいしかった」と絶賛。また、赤飯は宇宙の仕事が成功した「お祝い」の際に食べることがあり、各国の宇宙飛行士が絆を深めるのに役立つという。二〇〇七年に宇宙食に認証されて以降、野口聡一さんらが尾西食品の製品を食べた。

 ただ、尾西食品は東日本大震災後、非常食の生産を優先させ、宇宙食の納入を断ってきた。「宇宙飛行士に寂しい思いをさせたくない」と話す伊藤さんは、来年中の生産再開を目標に置く。

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 この連載は林啓太、池井戸聡が担当しました。

 

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