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【探訪 都の企業】

<FC東京熱血応援編>【上】伊場仙(中央区日本橋小舟町) 賭けたミスマッチ

「FC東京扇子」を手にする伊場仙の吉田誠男社長=東京都中央区で(沢田将人撮影)

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 きらびやかな京扇子ならまだしも、見た目地味な江戸扇子だ。

 「ハナからミスマッチでしょ、サッカーと江戸扇子は。ならば徹底的に外そうと」

 四百年、脈々と続く江戸扇子の老舗「伊場仙(いばせん)」。十四代目の吉田誠男社長(63)は二年前から手掛けるチームグッズの扇子を手に、“あの日”の決意を振り返った。

 FC東京のスポンサーからの依頼で、スタジアムの抽選プレゼント用に作ったのがきっかけ。それを見たチームから「今度はチームグッズとして作ってほしい」と打診された。

 しかし、動きの速い展開で若者向けのスポーツと、世間的には年配向けの伝統工芸品。「不釣り合い。売れ残るかもしれない」と迷いに迷った。しかもマフラーやタオルに代表されるチームグッズは、FC東京カラーの青や赤を前面に出し、目立つデザインが多い。江戸扇子との相性が最大の悩みだった。

 ただ、呉服店や百貨店などなじみ客にだけ頼っていては将来が不安。「新たな客層を開拓できるチャンスだし、応援する地元チームのためなら」と、半ば“賭け”で一肌脱ぐことを決めた。それはFC東京側の「老若男女を問わずファン層を開拓するために老舗の力を借りたい」(平野大輔・FC東京マーチャンダイジング部)との思いと符合した。

 本物にこだわった渋いグッズは大当たりした。あえて青に深みを加えた落ち着いた色合い。「親骨」に入れた「FC TOKYO」のロゴはさりげなく。小紋柄など江戸の粋を表現するデザインは崩さなかった。

 「国産では一番」の滋賀県・安曇川(あどがわ)産の真竹を使い、扇子入れの袋もつけた。値段は三千円前後と、年七百種類に上るグッズの中では高額だが、吉田社長の心配をよそに完売。デザインを変え、原則スタジアムで年間六百本前後も販売するが、どれも在庫切れだ。

 「スポーツグッズは初めて」と、老舗にとっても挑戦だった一品。「ミスマッチの妙を楽しんでもらおう」と送り出した逸品は、J2独走で巻き起こるFC東京「扇風」、いや旋風に一役買っている。

<FC東京からひとこと> さりげなく応援したい人向けで、普段遣いもできるグッズ。年配や婦人層にアピールしてファンの掘り起こしにもなり、応援の輪が一段と広がった

    ◇

 東京都調布市を本拠とするFC東京。J2で長丁場の苦しい戦いを続けてきたが、この週末にもJ1昇格が決まりそうだ。シーズン中、チームとともに戦い、支えてきた「都の企業」を紹介する。

 

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