社名の「アテナ」は創業時の主な業務だったダイレクトメール(DM)の「宛名書き」にちなんで付けられた。アテナ(東京都江戸川区臨海町)が、DMなどデータ入力拠点の一部を上海に移したのは二〇〇一年。当初は人件費の削減が最大の目的だったが、「中国にとてつもない可能性を感じた」という渡辺剛彦社長(48)が〇五年に現地法人、アテナ上海を設立。中国に進出した日系企業のサポートを始めた。
だが、当初は中国の厳しい規制に苦しんだ。DMの封筒に商品の写真を印刷したり「割引券入り」などの文字を入れたりすることが思い通りにできない。DMの試供品を当局に示すと「宛名以外の文字の印刷は控えるように」と指導されることもあった。アテナ上海のトップ、渡久地(とくち)裕総経理(50)は「特技が生かせず、歯がゆい思いもあった」と振り返る。
そんな中、徐々に受注が増えたのが通信販売の代行業務だ。企業にとって利用者データの保護を伴う通信販売の成功には、信頼できる代行業者が不可欠。アテナ上海は、上海郊外に二千平方メートルの倉庫を借り、カメラやメガネなどの通販の受注から発送までを担う体制を構築。顧客の信用を得た。
さらに三年ほど前からは「得意分野」の仕事も増えた。衣料品や化粧品などの販売を促進する景品付きキャンペーンの代行だ。渡久地総経理は「日本で培ったノウハウを説明すると、理解してくれる企業が増えていった」と話す。
中国で日系企業は「自社のホームページにお得な情報がある」などのメールを携帯電話に送信し、応募者に景品を贈るキャンペーンなどに積極的だ。
キャンペーンの代行は、アテナにとって日本ではDMと並ぶ事業の柱。アテナ上海の社員約三十人は「地域や年齢、性別などで偏りがないよう景品の当選者を決めるシステムや、アンケートの結果を分析し、販売促進の資料として企業に還元することができる」と顧客にアピール。これが評価され、昨年はアパレル、精密機械など約百社から受注することができた。
「国民の所得が伸びている中国では、質の高いサービスを求める消費者が増えている。これに応えられるよう努力を続けたい」と渡久地総経理。「将来は中国企業からの注文を増やしたい」と意気込んでいる。 (上海・今村太郎)
<江戸川区の本社から一言>渡辺剛彦社長「戦略描き業務拡大」
中国でのビジネスは、東京のアテナと同じように発展させていけると確信しています。今後は東南アジアへの業務の拡大を目指します。二、三年のうちに、将来の「アジア戦略」を固めたいとも考えています。