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【探訪 都の企業】

<省エネ実践編>【上】マテリアルハウス(大田区仲池上) 筒で採光 自然照明

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 天井から降り注ぐ木漏れ日のような光で事務所の中がキラキラと輝く。東京都大田区の「マテリアルハウス」は、本社の天井に縦一・二メートル、横三十三センチの穴を三つ開け、自社で開発した「光ダクト」を取り付けている。

 光ダクトは鏡を使って屋外から太陽光を導く装置。鏡を組み合わせた縦長の筒(ダクト)の中で反射を繰り返した光が、室内に取り込まれる構造だ。

 昼間は照明代が節約でき、省エネにもつながるが、それだけではない。新井秀雄社長(62)は「照明と違い自然の光だから健康にも良い」と胸を張る。直射日光に含まれる紫外線を低減できるのも売りだ。

 マテリアルハウスは従業員約三十人で、二〇一二年三月期の売上高は約十五億円。光ダクトの技術を支えるのはドイツから輸入した鏡面板だ。普通の鏡は筒の採光部からの距離が離れるにつれて光が弱くなるが、この鏡面板は、反射を繰り返しても光をほとんど失わない特殊なアルミニウムを素材に使う。

 電気を使わないから電気系統のトラブルの心配もない。新井社長は「昼間なら地下や太陽光が入らない屋内でも、明かりだけは確保できる」と、停電時に光ダクトが力を発揮すると強調する。

 新井社長が光ダクトの開発に関わり始めたのは、各国が排出する温室効果ガスの削減目標を明確化した十五年前の京都議定書締結がきっかけだった。

太陽光を取り入れて木漏れ日のような明かりを作り出す「光ダクト」について話す新井秀雄社長(木口慎子撮影)

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 「これからは環境が重要な時代になる」と確信し、当時、卸売りで扱っていた、コピー機などに使う鏡面板に目を付けた。光の反射の仕組みなどを知るため三角関数や連立方程式を独学。光ダクトの開発を進めていた大手設計事務所に「見よう見まねで書いた(光ダクトの)マンガの設計図」を提出し、共同研究を申し入れた。

 当初は「怒られたというより、あきれられた」。だが熱意が通じ図面の書き方の指導を受けることができた。

 光ダクトは大きなものでは一億円程度と高価だ。それでも技術力が高く評価され、政府は〇八年の北海道洞爺湖サミットの特設会場に導入。トヨタ自動車も工場の見学コースに採用している。

 節電が求められている今、新井社長は思う。「我慢の節電は長続きしない。照明を間引いたり冷暖房を切って暑さ寒さに耐えながらの仕事は非効率的。社会システムに省エネ技術を組み込むべきだ」。光ダクトがその一助になると信じている。 (山口哲人)

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 東京電力福島第一原発事故後、節電に対する国民の意識が高まっている。優れた省エネ技術を持つ「都の企業」を紹介する。

 
 

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