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【探訪 都の企業】

<省エネ実践編>【下】日進産業(板橋区坂下) 塗るだけで断熱

断熱実験装置(左)を動かし、開発した「GAINA(ガイナ)」の効能を説明する日進産業の石子達次郎社長

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 壁などに塗るだけで節電につながる塗料を製造・販売する企業がある。東京都板橋区の日進産業。従業員約三十人の企業が生み出した「GAINA」(ガイナ)は、熱を遮る効果が高い。

 石子達次郎社長(58)が開発を始めたのは二十五年ほど前。当時は工場用機械の製造が業務の中心だったが、ある日、取引先から「夏は工場内が暑い。壁に断熱材を入れたい」と相談された。

 だが、機械がびっしりの工場では、壁と機械のすき間はわずか五ミリ。断熱材の挿入は無理だ。一方で石子社長はその時「日光が当たった白色の折り込みチラシに触れた体験を思い出した」という。

 光を反射しやすい白色のチラシは、黒色ほど熱くならない。この記憶を基に石子社長は「グレーだった内壁を白色に塗り替えたら…」と進言。実行すると温度は下がった。

 さらに石子社長は温度が下がった理由を徹底的に調べた。その結果、色によって中に含まれる物質が異なるという塗料の特徴が、室温の変化に影響を与えたことに気づく。「塗料の材料の性質を生かし断熱効果のある製品をつくれないか」。この発想がガイナ誕生につながった。

 「工夫したのは塗料に配合するセラミックの種類と割合だった」と石子社長。陶器の成分にもなるセラミックは周辺の温度に適応する特性がある。ザラザラした手触りの塗料を壁に塗れば、夏は外からの熱を室内に取り込まず室温を低く抑えられる。冬は暖房の熱が逃げにくく暖かな室温を保つことが可能だ。

 最終的に約七百種類のセラミックの中から最適なものを選んで配合し、高い断熱性を持つ塗料をつくり出した石子社長。「ある工場では年約百七十二万円だった工場の電気料金が約八十八万円に減った」と胸を張る。近年は仏像などを保存する寺院の「宝物殿」や、気温が高い赤道を通る自動車運搬船にも使われている。

 省エネへの意識が高まる中、最近は一般家庭からの問い合わせも増えた。「一戸建て住宅での利用で冬場の電力使用が約三割減った」との報告もある。技術力が必要で、一般の人が塗装するのは難しいが、日進産業の提携工務店などに依頼すれば利用が可能だ。

 ガイナの価格は一般的な塗料より50%ほど高い。ただ工賃などは同じで「工事の価格差はそこまで開かない」と石子社長。今後は「一戸建て住宅など身近な場所で多く使われるようにしたい」と目標を話した。 (木村留美)

 
 

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