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【探訪 都の企業】

<水のインフラ編>【上】英王室信頼の透明度 日本システム企画(渋谷区)

水道管に取り付け、赤さびを除く「NMRパイプテクター」について話す熊野活行社長=東京都渋谷区の日本システム企画で(伊藤遼撮影)

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 英国のエリザベス女王が居住し、三百年以上の歴史を持つバッキンガム宮殿。二〇〇七年一月、電気や薬品を使わずに水道管内に発生した赤さびを除去するメード・イン・ジャパンの不思議な装置が取り付けられた。

 装置は東京都渋谷区の「日本システム企画」が開発した「NMR(核磁気共鳴)パイプテクター」。熊野活行社長(63)は「英国王室に日本の独創的な技術が認められた」と胸を張る。ウィンザー城や有名老舗デパートのハロッズなど歴史的建造物での採用実績は百件を超え、いま英国市場を中心に急成長している。

 赤さびが水に溶けるといわゆる「赤水」になるが、装置を付けると一カ月ほどで透明な水に改善される。築三十五年超の車返西住宅(府中市)では二〇〇一年に二千五百万円で装置を四つ購入。管理組合の殿垣英一理事長(74)は「赤水の苦情は全くなくなった」と効果を実感する。

 使い方はリング状の金属装置を水道管の外側に取り付けるだけ。装置から発生する特殊な電磁波が水道管内を通る水の分子と共鳴して「水和電子」を生む。それが赤さびと結び付くと、人体に無害で水道管を腐食させない黒さびに変化する。

 水和電子はすべての水分子の内部にあるが、それを取り出す電磁波を見つけるのは「砂浜で一つの砂粒を探すようなもの」という。大手企業の技術者から独立した熊野社長が数年をかけて、十数種類の金属を組み合わせて水分子だけに反応する電磁波を発見した。

 最大の利点は維持費が不要で、大幅なコスト削減につながることだ。水道管は赤さびに伴う腐食で二十年を目安に取り換えるが、多額の工事費がかかる。だが、装置を付けると建物の耐用年数中は水道管を取り換える必要がなくなり、「装置購入と水道管取り換えを比べると、費用は二十分の一から十分の一」(熊野社長)になる。

 ただ、一九九八年の販売当初は思うように売れなかった。「前例のない仕組みだけに『詐欺商品だ』と中傷も受けた」と熊野社長。学会で科学的効果が立証され、英国での採用実績も広がるなど、ようやくその効果が認知されるようになった。

 今後の課題は学校など公共施設への普及だ。これまで装置が設置されたのは、ほとんどが民間病院やマンションで、自治体での採用は進んでいない。国や自治体は新規参入の壁が高い上、新しい技術の採用に慎重なためだ。

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 ただ、熊野社長は「国土交通省に公共工事に活用できる新技術として認定され、追い風も吹いている」と話す。国や自治体が古くなった公共施設の対策に迫られる中、歳出削減の「切り札」になる可能性を秘めている。

   ◇  ◇

 全国で老朽化したインフラへの対応が喫緊の課題になっている。老朽化を食い止める独創的な技術を持つ「都の企業」を紹介する。

 

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