東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 探訪 都の企業 > 記事

ここから本文

【探訪 都の企業】

<こだわり製品編>【上】豆腐屋のラッパ復刻 日本教育楽器(港区芝大門)

製造した豆腐屋のラッパを持つ日本教育楽器の長谷川茂行社長=東京都港区で(高嶋ちぐさ撮影)

写真

 東日本大震災の被災地を支援し、人と人との絆を深めようと全国の信用金庫が連携して八月六、七の両日、「2013“よい仕事おこし”フェア」を東京国際フォーラム(千代田区)で開く。出展する「都の企業」の意気込みと、ものづくりへの思いを紹介する。

 「パープー、パープー」。豆腐の移動販売でおなじみの懐かしい音色が響く。昨年四月に「とうふ屋のラッパ」の販売を始めた港区芝大門の「日本教育楽器」。金色に輝く真ちゅう製のラッパは手に取るとずしりと重みがある。「楽器屋としてちゃんとした物を作りたかった」。長谷川茂行社長(66)は自信作をいとおしそうに見つめる。

 もともと子ども用のハーモニカや鍵盤ハーモニカを製造する同社。一九九〇年代にはその技術を使ってサッカーJリーグや長野五輪の応援用ラッパ、やかんの湯の沸騰を知らせる笛を作っていた時期もあった。

 開発のきっかけは五年以上前にさかのぼる。豆腐屋が使用するラッパを製造する老舗メーカーがなくなって十年以上がたち、新たに入手することが困難になっていることを知った。「応援用のラッパを改良すれば同じ音が出せる」と、プラスチック製のラッパを作製した。

 作り始めて数年後、豆腐業界から思いがけない悪評を耳にする。「最近豆腐ラッパの偽物が出回っている」というのだ。聞けば長谷川さんの作った、応援ラッパを改良した豆腐屋のラッパのことだった。材料も音の出し方も本物とは違うという厳しい指摘だった。

 「偽物と言われ、楽器屋としてのプライドが傷ついた。それならば本物と認められる物を作ろう」と奮起。管楽器のラッパづくりに挑戦することになった。

 新たに取りかかったものの、従来の豆腐屋が使っていたラッパの図面は手に入らず、文字通り見よう見まねで作った。もともと管楽器は同社で取り扱ったことはなく、管の長さや太さ、振動させて音を出すリードの削り方など試行錯誤を繰り返し、出来上がるまでに半年かかった。

 完成したラッパは一本二万五千円と安価ではないが、「本物の音色」を求める業者は予想以上に多く、一年で五十本を売り上げた。破損した場合の補修、音の調整といった購入後の手入れも請け負う。

写真

 一本目は東日本大震災で豆腐工場や販売用のワゴンを流される被害に遭いながらも、再び販売を再開させた宮城県気仙沼市の千葉淳也さん(39)に届けられた。千葉さんは長谷川さんのラッパを「使いやすく音色も安定していて、響きがいい」と、被災地に懐かしい音を響かせている。

 「失敗した作品もいろいろあるけれど、ものづくりはチームワーク。今回も職人の技があってこそ完成した」と長谷川さんは振り返る。今は吹いても吸っても音が出る、紀元前にあったとされる笛の復元に取り組んでいる。

     ◇

 2013“よい仕事おこし”フェアでは約400のブースが設けられ、東北の被災企業も出展する。東北特産品の販売やグルメを味わえるコーナーもある。東京新聞も出展し、新聞製作を実演する。入場無料。

 

この記事を印刷する

PR情報