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【探訪 都の企業】

<府中編>【上】世界一リアルな星空 プラネタリウム投影機 五藤光学研究所

五藤光学研究所で製作されたプラネタリウム投影機(旧機種)と五藤信隆社長=東京都府中市で(安江実撮影)

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 日本の教育・文化は、大手だけではなく多くの中小企業が支えている。今回は都心から離れた府中市を拠点に、キラリと光る技で教育・文化に貢献している「都の企業」を紹介する。

 西東京市の多摩六都科学館。直径二七・五メートルの大型ドームいっぱいに星空が広がると、「わあ、すごーい!」と子どもたちの歓声が上がり、拍手が湧き起こった。

 星空を映し出しているプラネタリウム投影機は五藤光学研究所(府中市矢崎町)が制作した「ケイロンII」だ。二十三メートルを超える大型ドームでは世界初となる高輝度発光ダイオード(LED)光源を採用し、十八等級までの約一億四千万個超の星を投影できる。一昨年秋には「最も先進的なプラネタリウム」としてギネス世界記録に認められた。

 従来のプラネタリウムの星の数は最大でも四千万個で、天の川をぼんやり明るい帯で表現していた。「ケイロンIIは天の川を構成する星を一つ一つ映し出している。リアリティーのある星空が評価された」と五藤信隆社長(47)は胸を張る。

 同社は一九二六年、信隆社長の曽祖父の斉三氏が創業。斉三氏は一〇年のハレー彗星(すいせい)の地球接近をきっかけに星空に興味を持ったという。子どもたちの宇宙への関心を育てるため、教育現場に望遠鏡を普及させようと、勤めていた日本光学工業(現ニコン)から独立した。

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 斉三氏は戦後、プラネタリウム投影機の開発に情熱を燃やす。だが、「一中小企業に天文の動きを再現する機械を作れるわけがない」という中傷も多かった。

 五九年に完成した国産初のプラネタリウム投影機は東京国際見本市に出展された後、浅草の娯楽施設に設置され、反響を呼んだ。以来、同社はさいたま市青少年宇宙科学館や、横浜市のはまぎんこども宇宙科学館などのプラネタリウムを手掛けてきた。今では世界シェア四割のトップメーカーだ。

 ケイロンIIが映し出す星空は、世界各地の天文台で観測された数十億の星のデータをまとめて作り上げられた。誤差の修正には苦労したが、信隆社長は「子どもたちには本物を見せてあげなければいけない。適当には作れない」と言い切る。「もっと天文を身近に感じてもらえる製品を世に出していきたい」。曽祖父譲りの熱意は、プラネタリウムのさらなる進化を見据えている。

 

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