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【探訪 都の企業】

<府中編>【下】作品に命 文化支える 同人誌印刷・緑陽社

棚や壁にグッズが並ぶ社内で同人誌を手にする武川優代表=東京都府中市で(戸上航一撮影)

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 「原稿チェックもとても丁寧。自分では気付かなかったミスもフォローしてくれる」「高いけど、高いなりの仕上がりの美しさ」

 同人誌作家たちが印刷所について、良いと思う点を挙げるツイッター。その中で、誠実な対応や印刷の品質で高い評価を得ているのが緑陽社(府中市分梅町)だ。

 武川優(まさる)代表(61)は「高い印刷代を払っても、いい作品を作りたいという作家が支持してくれている」と自信をみせる。

 同社は武川氏の友人が一九八〇年に創業し、武川氏も入社。当初はハンコや名刺の注文を受けていたが、事業は軌道に乗らなかった。しかし、近所の同人誌サークルに印刷を頼まれたのが転機になり、「口コミで評判が広まり、注文が次々と入ってきた」。

 八〇年代は「キャプテン翼」や「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」などの漫画やアニメが流行し、パロディーの同人誌が続々と作られていた時代。友人に代わって代表になった武川氏は、同人誌印刷に特化することを決断した。

 通常の印刷はシアン(藍)、マゼンタ(紅)、イエロー(黄色)、黒の四色のインキでカラーを表現するが、人物の肌の色を明るく見せるため、蛍光ピンクを加えた五色印刷を八五年ごろにいち早く取り入れた。これが功を奏し、四年間で売り上げは十倍に伸びた。武川氏は「印刷しながら、みるみる同人誌の世界が発展していくのが見えた」と八〇年代を振り返る。

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 当時は同人誌活動への偏見も根強かった。「子どもの遊びととらえたり、女性相手だと侮って手荒な製本をしたり、まじめに対応しない印刷所もあった」という。それを反面教師に、同社は「品質と誠実」を二つのテーマに掲げ、業界での地位を固めた。その後は本を開くとイラストが飛び出る仕掛けや、うちわやカレンダーなどのグッズ制作など得意分野を広げていった。

 同社の発展と並行して同人誌文化も拡大。同人誌活動を経て漫画やアニメ、ゲームなどの業界に入っていく若者も多い。「年間約三十万点が作られる同人誌の世界でもまれ、大衆に受ける作品作りの力を培うからこそ、日本のコンテンツ産業が伸びている」と武川氏。同人誌文化の発展を支えてきた自負をのぞかせた。

  (この連載は北條香子が担当しました)

 

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