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【探訪 都の企業】

<小金井編>【下】手仕事で理想の形追求 工夫重ねたキッチン用品 ヨシタ手工業デザイン室

キッチン雑貨などのデザインを手がけるヨシタ手工業デザイン室の吉田守孝さん=東京都小金井市で

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 ステンレス製の鍋敷きやナラ材のトレー、子どもが持ちやすい食器。小金井市中町の住宅街にあるヨシタ手工業デザイン室の作業場から生まれた製品は、使いやすさと美しさを兼ね備えているのが売りだ。デザイナーが考えた製品というと「見た目重視で使い勝手が悪いのでは?」と思われがちだが、吉田(よした)守孝さん(48)は「使い勝手を追求した結果、美しいのが理想」ときっぱり。

 ヨシタ手工業デザイン室の吉田(よした)守孝さん(48)は、石川県小松市出身。実家は九谷焼の上絵付けを手掛ける窯元で、父の美統(みのり)さん(82)は人間国宝。もの作りが身近な環境で育った。高校時代に工業デザインに興味を持ち、金沢美術工芸大学に進学。卒業後は柳工業デザイン研究会に入り、日本の工業デザイナーの草分けである故柳宗理(やなぎそうり)さんに師事した。

 柳さんからは、デザインを製品化する作り手とのやりとりを重視する姿勢を学んだ。その過程で素材の持ち味や、加工技術の特徴などの情報を引き出し、新たな製品の可能性を考える。

 また、近年は工業デザインもコンピューターで行う作業が主流になってきたが、吉田さんは作業場で発泡剤や石こうで実寸大の模型を制作。細部まで調整した上で、日本各地の職人に製作を依頼するスタイルを貫いている。

 看板商品の一つである「ラウンドバーシリーズ」もそんな過程から生まれた。金属加工の街として知られる新潟県燕(つばめ)市で、縁が丸まったステンレス板材を見つけた。もともと水差しの持ち手用に作られたものだったが、手によくなじみ、握ったときの感触が柔らかく感じられた。

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 吉田さんは金型を使わずに切断、切削、研磨という一般的な金属加工技術のみで作れる製品を企画。シリーズの一つのY字形の鍋敷き(税抜き四千円)は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞を受賞。刃を交換して長く使えるようにしたピーラー(皮むき器)は、税抜き三千円と高めだが、切れ味がいいと人気だ。

 「日本は手仕事の領域では、世界に類を見ない多様な技術力を持つが、製品が作られなくなれば衰退してしまう」と危機感を持つ。自然豊かな環境が気に入って五年前に転居してきた小金井市を拠点に、技術の伝承や産地の活性化に貢献していく決意だ。 (この連載は北條香子が担当しました)

 

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