東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 探訪 都の企業 > 記事

ここから本文

【探訪 都の企業】

<信金発!地域発見フェア編>【下】はさみに日本刀の知恵 ヒカリ(板橋区)

けんしょう炎に悩む理美容師のために引き金式のはさみを開発しているヒカリの高橋一芳社長=木口慎子撮影

写真

 理容師や美容師が使うはさみのトップメーカーが「ヒカリ」(板橋区)だ。高橋一芳(かずよし)社長(63)は「道具次第で仕事は楽しくも嫌にもなる。理美容師の立場に立ったはさみ作りを心掛けている」と話す。

 同社の前身は高橋社長の父・福太郎さん(故人)が一九六七年に設立した光刃物研究所。福太郎さんは理容店の三代目だったが「はさみが改良されれば、もっと良い仕事ができる」と店をやめて研究に専念。当時、理容師になったばかりの高橋社長は「修業を終えて帰ったら、継ぐ店がなかった」と苦笑する。

 理想のはさみは、日本刀の刃の特徴を取り入れたことで実現できた。普通、はさみは挟んで閉じたときに切れるが、刃の断面を「蛤(はまぐり)刃」という曲線を描いた形状にすると、開閉に力を入れなくても刃が髪にスッと触れただけで切れるようになる。「この曲線は機械では作れない」といい、今でもすべて手作りだ。

 売り出すと、従来の三倍以上の価格にもかかわらず、口コミで飛ぶように売れた。

 アメリカやロシア、韓国などでも高い評価を受け、海外の愛用者も多い。

 現在は計百十二種類の製品をそろえ、手の大きさや経験年数、技術力、利き手で最適なはさみを選択できる。十万円以上のはさみもあるが、最も安いものは二万九千円(税抜き)だ。「学生でも買える価格から取りそろえた」という。

写真

 現在は、けんしょう炎に悩む人向けのはさみを開発中。長年の手への負担で思うようなカットができなくなり、仕事を辞める人が多いと聞いたのがきっかけだ。拳銃のような形でグリップに親指を固定し、中指と薬指で引き金を引くと刃が動く。「職業病を解決するのも、道具を作る側としての課題」と力を込める。

 全国七カ所にアフターセンターを構えるなどメンテナンスにも力を入れる。「ちゃんとメンテナンスすれば二十五年は使える。いつまでも愛される道具として付き合っていってほしい」と願っている。

 (この連載は伊東浩一、白山泉、北條香子が担当しました)

 

この記事を印刷する

PR情報