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【探訪 都の企業】

<働き方改革編>(下)外国人雇い 時短実現 「見える化」生産性2倍に

イラン人従業員のモラディ・アバースさん(左)と話す神藤誠工場長=東京都八王子市の栄鋳造所で

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 言葉や文化の異なる外国人にも働きやすい職場づくりに努めたことが、図らずも全社員の労働時間短縮(時短)に結びついた中小企業の工場がある。鋳造メーカーの栄鋳造所(東京都八王子市)だ。神藤(かんどう)誠工場長(49)は「これまでの習慣を見直したら、時短につながった」と振り返る。

 「技術や知識を身に付け、将来は海外営業を担いたい」。昨年九月に入社したエチオピア人の男性(36)が意気込みを語った。現在、難民認定を申請中だ。栄鋳造所では男性のほか八人の外国人が働く。従業員三十二人の四分の一を占める。給与体系は日本人従業員と同じだ。

 一九五二年に創業。自動車の座席シート用の金型を手掛け、国内自動車メーカーの下請け業者を相手に取引してきたいわば「孫請け」だ。だが二〇〇八年のリーマン・ショックを境に経営危機に陥った。

 鈴木隆史社長(42)は「下請けのままでは先がない。世界に通用する企業を目指さなければ」と決意。従業員の語学力や国際感覚が自然と高まる職場にしようと、NPO法人難民支援協会(東京)の協力を得て外国人を雇い始めた。

 工場の炉は七五〇度の高温に上り、夏場は室温が三八度になる過酷な現場だ。まだ日本語が話せない外国人も安全に働ける職場環境を整えるため、業務の見直しを進めた。従来の「見て覚えろ」といった曖昧な指示では伝わらないため個々の作業を簡潔な絵で表し、マニュアルをつくった。

 絵にすることで作業の「見える化」が進み、仕事を共有できるようになった。取引先とのなれ合いが長時間労働の原因となるムダを生んでいることにも気付いた。外注した製品に不良品が混じっても「やり直せばいい」と容認して二度手間が生じていたが、不良率が低い業者を厳選。怒鳴り込まれても、単価や納期に無理がある仕事は断った。

 その結果、年間稼働日が九日減った。一人当たりの残業は最長百時間に上っていたが二時間まで縮小した。一方、生産性は二倍近く改善。その分、従業員の負担を軽くし、今夏は給料を変えずに週休三日にした。

 意識改革は職場の新たな意欲を引き出しているようだ。今年二月から外国人従業員が講師を務める英語教室が始まり、社内有志が参加している。

 中小企業の人手不足は深刻化。しかし、神藤氏は「最近は募集しなくても若者が集まってくる」と明かす。職場に「多様性」を受け入れる柔軟さが好循環を確実なものにしている。

 (この連載は伊藤弘喜が担当しました)

 

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