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【探訪 都の企業】

<信金編>【1】西京信用金庫(新宿区) 地域守る耐震融資

高崎功一さん(左)に耐震工事について聞く西京信用金庫の津金邦嘉さん=東京都新宿区で(池田まみ撮影)

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 木訥(ぼくとつ)とした口調で「家族のため」と繰り返されると、何とかしてあげたいという思いは強くなった。

 二〇一五年十一月、西京信用金庫営業推進部の津金邦嘉(くによし)さん(51)は、東京都新宿区に住む高崎功一さん(84)から、自宅の耐震工事の融資相談を受けていた。半世紀近く住む木造二階建てで、家族四人暮らし。問題は高崎さんが年金暮らしで、既に八十歳を超えている点だった。

 津金さんも最初は「年齢や収入を考えると難しい」と思ったが、西京信金は地域防災の強化を打ち出していた。独自の耐震工事融資を始め、地域住民を対象にした防災説明会を地道に続けている。「ウチがやらなければ誰がやる」。部内でそんな声が高まっていた。

 高崎さんが望む風呂などのリフォームは我慢してもらい、当初見積もりの七百万〜八百万円を三百九十万円まで削った。月々の返済額は三万五千円ほどになり、「年金でなんとか工面できる」範囲に抑えられた。

 それでも借入期間は十年、返済を終えるとき九十歳を優に超える。無担保だが、完済時に八十歳以上の場合は保証人が必要なため、高崎さんの長男を交えた話し合いの場をつくった。高崎さんは「おまえたちのために何とかしたい」と話し、長男は連帯保証人になることに同意した。十二月初めに融資が決まった。

 高崎さんが工事を考えるようになったのは、東日本大震災で家の瓦がすべて落ちたときの衝撃だった。戦時中、空襲で家を失った記憶がよみがえった。「家族をあんな目に遭わせたくない」。津金さんは、口数の少ない高崎さんの工事への強い思いを感じていた。

 融資が決まった後、高崎さんは細かな手続きでも、真冬の寒さの中を自転車をこいで何度も金庫に足を運んだ。工事を終え、昨年夏に津金さんが家を訪ねると、「できたよ」と笑顔で迎えられた。「やって良かった」とこちらも自然と笑みがこぼれた。

 ◇ 

 人々が景気回復を実感できず中小企業の廃業が相次ぐ中でも、信用金庫は縁の下から経済を支えてきた。地域と共に生きる金融はどうあるべきなのか、「都の信金」の姿をリポートする。

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◆理事長のひと言

 創業が関東大震災という苦難の時期だったこともあり、東日本大震災の後に防災を前面に打ち出すことを決めた。われわれは人や建物が密集し、災害リスクのある都心から離れられない。「地域を守る」という芯の通ったテーマが重要だと考えた。この街を将来まで残すお手伝いができれば、と考えている。 (北村啓介理事長)

 

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