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【探訪 都の企業】

<信金編>【2】西武信用金庫(中野区)  二人三脚で苦境打開

西武信金神田支店の担当者と話す生産者直売のれん会の黒川健太社長(左)=東京都台東区で

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 ぼうぜんとする若い社長を静かに諭した。「夢や意気込みだけでは成功できないのです」  二〇一〇年夏、JR中野駅にほど近い西武信用金庫本店。法人推進部の高橋一朗部長(56)は、「生産者直売のれん会」(台東区)の黒川健太社長(41)の融資申し込みをいったん断った。設立から三期連続赤字のベンチャー企業。つい先日には、実質親会社のメインバンク「日本振興銀行」が不祥事で破綻状態に陥っていた。

 二〇一五年十一月、西京信用金庫営業推進部の津金邦嘉(くによし)さん(51)は、東京都新宿区に住む高崎功一さん(84)から、自宅の耐震工事の融資相談を受けていた。半世紀近く住む木造二階建てで、家族四人暮らし。問題は高崎さんが年金暮らしで、既に八十歳を超えている点だった。

 のれん会は全国の優良な食品業者をネットワーク化し、百貨店の催事などで商品を代理販売する会社だ。振興銀の信用不安が連鎖して催事契約が結べなくなっており、今資金が途切れれば倒産が避けられない。  すがるような思いだった黒川社長は「断られて一瞬頭が真っ白になった」が、高橋部長の「経営者は融資するわれわれとともに、責任を背負ってほしい」という融資の条件に従った。

 のれん会の全ての株式を、振興銀の関連会社から買い取るため、千六百万円の貯金を全て吐き出すことを決意。従業員にもカンパしてもらってさらに一千万円を集めた。再訪した黒川社長の本気を感じた高橋部長の判断は速かった。「本部案件としてやりましょう」。すぐに融資の検討が始まり、倒産の危機は去った。

 そもそも黒川社長が西武信金を頼ったのには理由があった。会社設立間もない〇七年秋、ある交流会で落合寛司理事長(67)から「面白いことを始めたね」と褒められたのを覚えていた。「赤字会社で担保もないけど、あの落合さんのとこなら事業の中身を評価してくれるかも…」。直感が会社を救うことになった。

 高橋部長は「創業期の赤字は当然。計画はしっかりしていたし、株を買い取る約束も果たしてくれた。あとはでき得る限りの支援をするだけだった」と振り返る。西武信金の担当者は今ものれん会の本社に足しげく通い、二人三脚の関係が続いている。

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◆理事長のひと言

 「金融機関が企業に信頼されていない」という根本的な問題に気付き、困っている中小企業を徹底的に支える方針を掲げた。徐々に本音の相談をしてもらえるようになり、「どうせ借りるなら最後まで面倒をみてもらえる西武」という意識が浸透してきたと思う。マイナス金利の厳しい環境下でも本年度の貸し出しは二千五百億円ぐらい伸びそうだ。 (落合寛司理事長)

 

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