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【探訪 都の企業】

<信金編>【5】さわやか信用金庫(渋谷区) 自転車目線で信頼育む

手術訓練装置を前に話すイービーエムの朴栄光社長(左)とさわやか信金の担当者=東京都大田区で

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 信用金庫から借りた自転車で、職員の後を走った。目に飛び込むのは、店の看板や住宅の表札、街行く人の表情。「これが信金マンの目線なんだ」

 製造業の町工場が集積する東京都大田区で二〇〇六年に創業したベンチャー企業「イービーエム」の朴栄光(パクヨンガン)社長(35)。早稲田大の学生時代に開発した心臓の外科手術用の訓練装置を製造・販売している。

 これまで若い外科医たちは、ゴム手袋にガーゼを詰めたり、湯葉やこんにゃくを使ったりと、苦労して血管をつなぐ手術の訓練をしてきた。同社は心臓の拍動を再現した装置に、着脱式の疑似血管を取り付け、簡単に効果の高い訓練ができるようにした。

 当初は自己資金で運営していたが、一三年に事業拡大に向けて国の補助金を活用。補助の三分の二は設備投資の精算後に支払われるため、つなぎの運転資金が必要となり、金融機関の門をたたいた。

 「融資の枠はいっぱい。新規はお断りしている」と大手銀行は門前払い。そんなとき、飛び込みで営業に来たのがさわやか信金だった。「どんな話題を提供すれば社内稟議(りんぎ)が通るか。人と人のつながりの中でお金が動く金融のイロハを学んだ」と朴社長。技術力はあっても経営は素人だった大学発ベンチャーには「融資の利子は授業料」だった。

 事業のきっかけにと近隣の病院の理事長を紹介してもらい、自転車で一緒に病院へ行くこともあった。朴社長は「大手銀行が車ならば、信金は自転車目線。その速さだからこそ集まる地域の情報、人のつながりが魅力」と話す。

 その後、同社は事業を順調に広げ、装置の導入台数は国内外で約三百五十台に上る。一六年には福島市に手術の訓練施設を開設。その資金の一部も、さわやか信金が融資した。篠啓友(しのひろとも)理事長(64)は「大手銀行が手掛けない数百万円の融資が大きく育つ。その中で築かれる信頼関係が信金の強み」と意義を強調する。

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◆理事長のひと言

 営業地盤である港区などの都心部は人口が増え、発展も著しい。もう一つの地盤の大田区・品川区は厚い人情が残る地域だ。地域の特徴は違うが、どちらも顧客との付き合い方は同じ。信用金庫は地域から預かったお金で、地域の方々へ融資する。地域の中でしか事業はできないので、取引は長期継続が基本だ。これからも地域と共に歩んでいきたい。 (篠啓友理事長)

 

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