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【南海トラフ巨大地震】

M9死者最大32万人 南海トラフ想定 7割津波犠牲

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 南海トラフで東日本大震災と同じマグニチュード(M)9級の巨大地震が発生すると、関東以西の広い地域で断水や停電が起こり、最悪の場合に九百五十万人が避難し、建物被害や経済活動への影響などで損害は二百二十兆円に上るとの想定を内閣府中央防災会議の作業部会がまとめた。揺れと津波を生き抜いた後も厳しい状況が続く。政府は新年度、具体的な対策を盛り込んだ大綱などを策定する。

◆防災・避難で6万人に減

 南海トラフでマグニチュード(M)9級の超巨大地震が発生した場合、三十都府県で最大三十二万三千人の死者が出る被害想定を内閣府中央防災会議の有識者会議が二十九日、公表した。七割は津波による犠牲者。最大死者数は二〇〇三年に内閣府が公表した二万四千七百人の十三倍となった。

 発生確率は極めて低いとしているが、東日本大震災の教訓から考えうる最大級の地震を想定。その上で、巨大津波が(1)駿河湾−紀伊半島沖(2)紀伊半島沖(3)紀伊半島沖−四国沖(4)四国沖(5)四国沖−九州沖の五カ所で発生したケースで、それぞれ被害を見積もった。

 死者数が最大となったのは、最も東寄りの駿河湾−紀伊半島沖のケースで、冬の深夜、風速毎秒八メートルに条件を設定した場合。東海地方を中心に最大の被害が生じ、津波で二十三万人、建物倒壊と火災で九万二千人が犠牲になる。

 都府県別では、地震発生から数分で津波が到達する静岡県が十万九千人で、全体の三分の一を占めた。次いで三重県の四万三千人。関東では東京都の島しょ部、神奈川県、千葉県、茨城県の沿岸で計約六千人が犠牲になる。関東の犠牲はいずれも津波が原因。

 死者数の想定は、避難の意識が低い場合を前提とし、地震直後に逃げる人が二割、最後まで逃げない人が三割の条件で推計した。地震直後の避難者の割合を七割に高め、逃げ遅れがいない条件だと、死者は十一万人以上減って二十万九千人になるとした。さらに耐震や防火などの対策が最大限に達成されることを見込めば、六万千人にまで減るとした。

 各市町村の浸水域も公表した。一センチ以上の浸水は最大で二十四都府県の千十五平方キロにおよび、東日本大震災の一・八倍。内閣府が避難ラインとする三十センチ以上の浸水域は八百七十三平方キロに上った。内閣府は今秋にも経済被害を見積もり、年度内には国としての総合的な対策をまとめる。

◆地道な対策 効果導く

 <解説>今回の被害想定は「想定外のない想定を」という方針の下につくられた。死者三十二万人という数字も、考えられる最悪の仮定を積み重ねて導き出した。このため想定した地震が起こる確率は「極めて低い」としかいえない。内閣府は「正しく恐れて」と呼び掛けるが、どうとらえるかは非常に難しい。

 だが、確かな部分もある。津波の避難意識を上げれば犠牲者が十一万人以上減るという試算だ。さらに、津波避難ビルの活用、建物の耐震化、家具固定、家庭用消火器の配備などの取り組みが100%達成できれば、死者は五分の一以下にまで抑えられるという。

 こうした防災対策は今も達成率を上げる努力が続いているものばかり。完全な達成は仮定の話かもしれないが、想定はM9の地震がすぐに来ると言っているのではない。確実に起こるM7、8級の地震には地道な防災対策が被害の抑制に大きな効果を発揮する。目標を高く持って防災対策の努力を続ければ、いつか最大の地震に襲われた時、人的被害を大幅に減らせることにもなる。 (永井理)

 <南海トラフの巨大地震> 東海沖から九州沖までの太平洋海底に延びる溝状の地形「南海トラフ」は、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込んでいる場所で、周辺を震源とした巨大地震が過去に繰り返し起きている。東から東海、東南海、南海地震の震源域とされ、3地震が同時または連動して発生したケースもあった。

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