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【南海トラフ巨大地震】

東京・島しょ部「犠牲1500人」 「高台へ」対策急ぐ

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八丈島で最も早く津波が到達するとされる八重根港を示す高野さん=東京都八丈町で

 最大千五百人が津波の犠牲になるとされた東京都の島しょ部。各島には九町村計約二万八千人がいて、犠牲者はその5・4%に当たる。たとえ早く避難しても七百人は津波にのみ込まれる被害想定に「とても逃げ切れない」の声が上がる。高台への避難路を整備する検討も本格化している。

 津波高三十一メートルと最大級の津波が想定された新島。地震発生から津波の到達まで最短で十二分しかない。「地域ぐるみで避難方法を考えなくては」。新島村消防団長の青沼邦和さん(59)は気を引き締める。

 村の中心地区には二千二百人が住むが、大半は標高一〇〜三〇メートル。想定高の津波だと水没する。死亡率100%となる深さ一メートル以上の浸水域も、海岸沿いの最大二・二平方キロメートルに及ぶとされ、徒歩だと逃げ遅れる恐れもある。

 村役場では現在、中心地区六カ所の町会で標高四〇メートル以上の高台に避難する経路の整備を協議している。車専用の道路を設けることも課題だ。担当者は「浸水予想図など被害想定の詳細が早く知りたい」と気をもむ。

 都心から南に二百八十キロの八丈島。「島で最も早く津波が到達するのが、この港です」。八丈町役場の高野秀男係長(44)は島西部の八重根港を指さした。港の数十メートル先に広がるのは、風よけの林と石垣に囲まれた住宅地。「高齢者の足ではとても逃げ切れない」。最高津波高が三月の内閣府の想定より一メートル高い十七メートルに上がり、危機感は募るばかりだ。

 八丈島では六十年間大きな津波がない。海岸から百メートルほどの場所で民宿を営む菊池幸子さん(62)は、東日本大震災で大津波警報が出た時も家に残った。だが、東北の惨状を見て津波への認識を改めた。「いざとなったら寝たきりの母をだっこして車に乗せ、(標高約八五〇メートルの)八丈富士まで逃げる」と話す。

 町は島内全域の標高三〇メートルラインを明確に記した新ハザードマップを九月にも全戸配布する。幹線道路の電柱に標高を記す看板の設置も検討しており、年間九万人の観光客にも注意を促す方針だ。

◆冷静で深刻に対処

 東大地震研の古村孝志教授の話 今回の最大クラスの被害想定で、最悪の場合ここまで被害が拡大する可能性が明らかになった。冷静かつ深刻に受け止めて防災に生かさなければいけない。津波について、最大でどこまで浸水するかが分かった成果は大きい。避難目標は基本的に今回の想定に合わせる必要がある。かなり大きな数値だが、防災でとるべき対策は同じ。防波堤などの施設では、平均クラスの津波しか防げないと考え、最大クラスの津波に対しては迅速な避難で対処するしかない。まずはすぐにできる対策を暫定的に進め、時間をかけて避難設備や集団移転などの街づくりについて考えるべきだ。

◆ハード整備に時間

 静岡大の原田賢治准教授(津波工学)の話 今回の想定はまれにしか起こらない最大規模の数字だが、対策を考えるベースになる。津波対策では堤防などのハード整備には時間がかかるので、住民の早期避難を確実にする対策が必要だ。近くに山や高台がある地域では、住民自らの手で避難路を造って設置・管理する方法もある。津波の危険性を意識し、避難行動に早く移れるようになるだろう。避難に適したビルや高台から遠い地域では、水の入らないシェルターなど新しい手法も考えなければいけない。

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