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【南海トラフ巨大地震】

生活に試練 備えを

 多くの死者が見込まれる南海トラフ巨大地震は生き残った人にも過酷な試練を与える。昨夏に続き、内閣府が十八日に発表した被害想定は、交通網やライフラインが広範囲でマヒし、水や食料が極端に不足するなど、生活への影響を浮かび上がらせた。一千万人近い避難者が出る中、命を支える水や電気の復旧をどう急ぐか、課題も突き付けている。いざという時に取り乱さないよう、身の回りの「備え」をもう一度見直す必要がある。(橋本誠、中山高志)

<道路・鉄道>被害6万カ所マヒ状態に

 関東から九州まで四十都府県の約四万カ所で道路被害が発生する。愛知の被害が最多の四千三百カ所で、静岡の四千二百カ所、三重の二千七百カ所と続く。被害の九割は内陸部に集中。路面や橋の損傷のほか、中山間地では亀裂やトンネル壁の剥げ落ちが生じる。

 幹線道路に比べて、幅が狭い道路は建物倒壊や浸水で通行不能になりやすい。静岡県南西部や愛知県の知多半島、三重県の志摩半島など震度7に達する地域では、道路の閉そく率が20%を超え、住民の避難や消防車、救急車の活動に支障が生じる。震度5強の伊豆半島でも、沿岸部は津波で通行が難しくなる。

 震度6強以上のエリアを通る東名・新東名高速道路は、被災と点検のために通行止めになる。中央自動車道は、名古屋地域への乗り入れで大渋滞が予想されている。

 鉄道の被害は約一万九千カ所で発生。最多は愛知の二千二百カ所で、三重の千六百カ所の順。静岡は千百カ所。東海道・山陽新幹線は被災と点検で全線不通になり、在来線も神奈川−山口間の通常ルートが通れなくなる。中京圏百十万人、京阪神圏二百七十万人の帰宅が困難になる。中部国際空港は空港島東側が最大二メートル浸水し、一時閉鎖となる。

 [ 図 ] 道路が閉ざされ通行に支障がでる割合

<避難者>発生1週間後がピーク

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 想定される避難者は関東以西の四十都府県で最大九百五十万人。津波や余震の危険が去っても、断水などで避難所に行く人が増え、一週間後にピークとなる。東日本大震災の経験に基づくシナリオからは、厳しい避難生活が垣間見える。

 【発生〜三日後】

 発生翌日の避難者は七百万人。千葉、神奈川では津波を警戒する人が多いため、この時点で最多になる。

 全体では六割が避難所に、四割は親族や知人宅など避難所以外の場所に身を寄せる。倒壊や火災、津波で家を失った人に加え、余震の不安や停電などで自宅を出た人も。避難所が満杯で、自治体の庁舎や学校、公園に寝泊まりする人も出る。

 三日後には、断水や食料不足で生活できなくなり、避難所に行く人が増え始める。

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 【一週間後】

 大半の都府県の避難者数がピークに。最多は愛知の百九十万人で、大阪百五十万人、静岡百十万人と続く。避難所の入所者は五百万人に達し、東日本大震災の四十七万人の十倍を超す。知人宅など避難所以外の場所にいる人の割合は五割近くに増える。遠隔地の身寄りや公営住宅への広域避難が目立ち始める。

 【一カ月後】

 ライフライン復旧で帰宅する人が増え、避難者は八百八十万人に減る。知人宅などにいる人が七割に達するが、避難所にも二百六十万人が残っている。

 【物資不足】

 家庭や自治体の備蓄で対応するが、最初の三日間で三千二百万食の食料と四千八百万リットルの飲料水が不足する。四〜七日目は不足分が倍増する。避難所によっては備蓄した物資が届かず、食事の配給回数や物資の充実度にばらつきが生じる。

 毛布は大量に不足。医療機関の対応力低下で避難所では風邪やインフルエンザが流行する恐れがある。

<ライフライン>断水 11県で90%以上

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 電力は、揺れや津波による浸水で火力発電所が停止し、停電率は山梨から西の二十府県で発生直後に89%以上となる。愛知では三百七十万軒が停電し、大阪に次いで多い。愛知、静岡、三重は発生翌日でもわずかしか改善しない。電力会社間の電力融通などで四日後には九割が回復するが、電力使用制限令や計画停電もあり得る。

 上水道は、中部以西の十一県で断水率が90%以上になる。このうち愛知、静岡など五県では発生直後よりも翌日に断水エリアが広がる。浄水場の非常用発電の燃料が一日以内に切れるためで、愛知の断水率は被災直後の65%から一日後には90%に跳ね上がり、全国最多の六百八十万人が断水に直面する。一週間で半分が復旧するが一カ月後でも14%が断水のままだ。

 下水道は、多くの処理場が市街地より低地にあるため津波で浸水する。被災直後に二十府県で九割前後の人が利用困難になる。一週間後には管路の復旧などが進む。

 都市ガスは、揺れで供給を自動停止する装置があり、点検を経て順次再開されるが、愛知、静岡、三重では復旧まで一カ月を超す。

 通信網も遮られる。固定電話回線は、九割近く不通になる府県が続出する。電線の被害より固定電話端末の停電が主な原因。一週間でおおむね復旧する。携帯電話は基地局の非常用電源が一日以内で切れて電波の停止域が広がるが、発生四日後に多くの基地局は復旧する。

 [ 表 ] 各都府県内の被害想定の最大値

 

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◆昨年発表の被害想定 死者最大32万3000人

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 内閣府が昨年八月に発表した被害想定で示された死者数は最大三十二万三千人。茨城から沖縄まで三十都府県にまたがり、最多は静岡の十万九千人。三重は四万三千人、愛知は二万三千人で、関東は沿岸部や島しょ部で計六千人が犠牲になる。津波による犠牲が二十三万人で最も多い。

 震度7エリアは静岡から宮崎までの十県百五十一市町村に広がる。静岡、高知、東京の島しょ部で最大三〇メートル超の津波を想定。静岡の沿岸部の一部では、死亡率が高い一メートルの津波がわずか二分で到達する。浸水は最大で二十四都府県の千十五平方キロに及ぶ。

 揺れ、津波、液状化などで全壊、焼失する建物は二百三十八万二千棟。

 内閣府が特に強い揺れや津波の発生するパターンを複数設定した中で、陸に近い場所で強い揺れが生じ、東海地方沖で巨大津波が発生したケースの数値を原則として使用。被害想定の一覧表と昨夏発表の想定分は各パターンの最大値を使っている。

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