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【山野井泰史のデジカメ日記】

日本を代表する世界的な登山家の山野井泰史さんが綴る日々の暮らし

僕のこころ(岳人2012年5月号掲載)
車は僕の宿

年間40日くらい、車の中で寝ています。
機材協力◎OLYMPUS

年間40日くらい、車の中で寝ています。

機材協力◎OLYMPUS

 関東は雨が続くというので、太陽を求め南紀に向かう。白浜から太地、柱状節理の岩を味わえる楯ヶ崎へと車を宿代わりに移動する。2日目の夜は林に囲まれた落ち着いた場所だった。深夜エンジン音が響いたので目が覚めてしまった。ちょっとした物音で起きてしまうのは、むかしむかしの怖い記憶が残っているせいだろうか。

 

 ロサンゼルス郊外、ボルダーで知られたストーニーポイント、ぼろい日本車の中で寝ているといつの間にか数人に囲まれていた。いきなり棒のようなものでフロントガラスが割られ伸ばされた幾つもの手によって外に引きずり出されナイフで腹を刺された。地面にうずくまっている僕の目の前で沢山の物が奪われてしまった。またこんな事もある。登山に備え渓谷脇の坂道に車を止め早々と横になっているとほのかに振動を感じ目を開けた。なぜかガラスの向うの星と山並みがゆっくりと移動している。もちろん運転席には誰もいない。サイドブレーキが、下りていた。

 

 南紀のとある駐車場、暗がりのなかルート図を眺めていると小さなライトがついたラジオからレッチリの軽快な音が聞こえてきた。永遠にこんな生活が続いてもかまわないと思えてしまう。