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【プレシニア記者がゆく これからの入門ガイド】

<続>これからの入門ガイド 江戸に学ぶ(3) 現代に通じる 古文書の世界

2008年11月7日

古文書の「小倉百句」を学ぶ受講者ら(立っている人が加藤敦子講師)=東京都中央区日本橋人形町のNSビルで

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 趣味で古文書を読む人はかなりの年配者ばかりと思っていたが、必ずしもそうでもないようだ。

 平日昼すぎ、地下鉄人形町駅に近いNSビルのセミナールームで開かれている古文書講座「百人一首のパロディーを読む」をのぞいた。参加者は50代を中心に10人。男女半々だった。

 講師は立教大学非常勤講師の加藤敦子さん。近世演劇(歌舞伎・人形浄瑠璃)が専門。文人としても知られる五代目市川団十郎(1741〜1806年)が、小倉百人一首をもとに作ったパロディー句集を教材としている。

 コピーされた句集を見ると、崩し字のため、漢字、平仮名ともすんなりとは読めない。現在では使っていない仮名が多いことも一因だ。例えば、今の「あ」は「安」の漢字の流れだが、同時に「阿」から生まれた別の仮名も使われている。「き」を表す仮名は主なものだけで五つもある。

 加藤講師の指導を受けて一句一句、崩し字に注意しながら解読していく。「初めは大変だけど、慣れれば、次第に楽に読めるようになる」と講師が励ます。

 その一つ、紫式部の「巡りあひて 見しや夫(それ)ともわかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな」の歌は、団十郎の手にかかると、「巡り逢(あ)ひて 見ぬ顔したり としのくれ」と、大みそかに借金取りから逃げる句になっている。また和泉式部の恋の歌は、吉原の遊女が冷たい仕打ちの客を恨む句に。講師が「裏を返す」(同じ遊女を二度目に指名する)など、当時の遊郭での遊びのしきたりについて説明した。

 江戸時代の風俗や世相が読み取れて興味深い。休憩を挟んで4時まで続いた。

 千葉市のコンピューター技師、藤原誠さん(58)は古文書を習い始めて4年目。「もともと言語に興味があり、外国語も勉強したが、そのうち日本語の源流に関心を持った。暗号を解くような喜びがある」と語る。また、横浜市の主婦、森下ひとみさん(54)はことし4月からの受講。「テレビ番組をきっかけに、江戸の庶民の生活が実際どうだったのかを知りたくなった。(古文書を読むと)生活の意識は、今とあまり違わないことが分かる」と言う。

 平日午後7時からの「近世畸人伝を読む」の講座では若い女性もちらほら。千葉県市川市の会社員、寺内瑠美さん(23)はことし大学を卒業したばかり。「仕事と違うことで気分転換をしたいと思って。奇想天外なストーリーがおもしろい。視野や世界観が広がる気持ちがする」と話す。

 主催のマディオ代表、藤原真由美さん(54)は、5年前に趣味の能楽のことを調べようとして、古文書が読めなかったことから、セミナー開催を企画したという。「江戸時代といっても根っこはどこか今の時代につながっている。自分なりの発見を、仕事や生活に役立てることができる。それが広い世代に受け入れられている理由と思う」と話している。 (朽木直文)

<古文書セミナー> セミナー運営会社のマディオは現在、秋期講座として昼の「団十郎の『小倉百句を読む』」と「俳人の旅日記を読む」、夜の「『近世畸人(きじん)伝』を読む」を、中央区日本橋人形町2の9の5のNSビル1階で開講中。受講料は1回昼4500円、夜4000円で、入会金1万円。講師は吉丸雄哉・順天堂大非常勤講師ほか。(電)043・222・0179

 

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