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【公共事業を問う】

土地改良事業 予算削られ苦渋 自民との蜜月崩壊

2010年4月4日

印旛沼の周辺に広がる大規模土地改良区=千葉県印西市で、本社ヘリ「おおづる」から

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 かつて一兆円を超す巨額予算を背景に、自民党と官僚、土木業界が強固に結び付いてきた土地改良事業。その構造が大きく変わりつつある。民主党政権下で予算が削られ、自民の支持団体「土地改良政治連盟」(土政連)が弱体化する中、農家からは「自民一辺倒ではいられない」との声が漏れる。 (北川成史、寺岡秀樹)

 「今、自民党の先生に頼んでも要望は通らない。願いをかなえるには民主党の先生を大事にしないと…」。千葉県佐倉市や成田市など六市町にまたがる印旛沼土地改良区の農家で、長年自民を支持してきた高齢の男性は複雑な胸の内を語った。

 同改良区は約五千ヘクタール、東京ディズニーリゾート二十五個分の広さを誇る全国有数の改良区だ。ヘリで上空から見ると、きれいに長方形に区切られた薄茶色の田畑が見渡す限り広がる。沼の水が約八千人の組合員農家の田畑に用水路で引かれる。

 男性は「稲作は二千年以上続いた日本の産業。自民だろうと、民主だろうと守ってもらいたい。そのために土地改良事業が必要だ」と言う。

 農地や用水路、農道などの整備は土地改良区ごとに行われ、ピークの一九九七年度には一兆二千三百億円に達した。予算確保のため所管する農林水産省農村振興局からは、官僚OB二人が自民党から参院選に出馬。常に二議席を確保してきた。

■集票マシン

 OB議員の“票”を集めてきたのが各地の土政連だ。栃木県のある土地改良区の幹部は「OB議員の後援会の入会用紙を持って友人や知人を回った」と証言する。中央・地方の土政連と各地の自民党土地改良支部の総収入は毎年一億円を超えた。参院選のあった二〇〇七年は、約七万六千人の会費収入を中心に一億九千万円を集め、選挙運動に充てた。

 だが、農業人口の減少や公共事業予算の削減で集票力は低下。〇一年の参院選に二十万八千票で当選した農水OBの段本幸男氏(65)が、〇七年は十二万八千票で落選。集票力にかげりが見えた。

■出馬辞退

 もう一人のOB議員の佐藤昭郎氏(67)は今年夏の参院選で引退する。南部明弘元九州農政局長(57)が自民党から出馬予定だったが、昨年末に辞退した。佐藤氏は「南部さんは、自分が自民党から出馬して、民主党を逆なでするのは耐えられないと考えた」と言う。

 今年二月、東京都内で開かれた都道府県土地改良事業団体連合会の会議。事業費は〇九年度比63%減の二千百二十九億円となり、「怒りを覚えた」(愛知県)「断腸の思い」(栃木県)など政権批判が相次いだ。

 だが、本紙が各地のの土政連に行ったアンケートでは、「与党を支援する」(岩手県)という回答のほか、約半数が「今後の方針は未定」とするなど、支持政党をめぐる混乱ぶりが浮かび上がる。

◆会員減自然の流れ

<五十嵐敬喜・法政大教授の話> 土地改良事業費の削減や農業人口の減少で、土地改良政治連盟(土政連)の会員が減ったのは自然の流れだ。さらに参院の職域代表候補の不在により、土政連の存在意義まで失われることは必然で、政官業の利権構造が崩れるのは良いことだ。とはいえ維持・修繕など必要な事業もある。財源を自治体に渡し、自治体の判断と責任でまちづくりの一環としての農業の在り方を考えていく必要がある。

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