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【公共事業を問う】

【第二部】揺らぐ利権(1) 小沢氏『ムチとアメ』 自民票田に兵糧攻め

2010年4月7日

深々とおじぎしながら、陳情に来た新潟県土地連の幹部らと名刺交換する小沢一郎民主党幹事長(右から3人目)=2月18日、東京・永田町の民主党本部で

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 二月十八日午後六時すぎ、東京・永田町の民主党本部。八階の幹事長室にある会議室で、小沢一郎は新潟県からの陳情団を出迎えた。県土地改良事業団体連合会(土地連)の副会長ら七人だった。

 「はい、○○さん、ご苦労さんです」。一人ずつ相手の名前を読み上げながら、上機嫌に名刺交換する小沢。緊張した面持ちの幹部らが新潟の地酒を手渡すと、小沢は「お土産を渡されると困っちゃうな、おれ」と笑顔でおどけて見せた。

 「きょうはお願いに参りました」。土地連の幹部らが老朽化した用水路などの写真を示しながら、農地整備の必要性を訴えると、小沢は驚いたように「コメどころの新潟がこんなに遅れているとは思わなかった。必要な事業はやらなければいかん」と力強く答えた。「予算を削った人とは思えない」。二十分の面会後、幹部らの表情は和らいだ。

 昨年末の本年度予算編成で、小沢は、農地の区画整理や用水路整備をする土地改良予算の半減を要求。結局、前年度比63%減の二千百二十九億円となり、各地の土地連に大きな衝撃が走った。

 十四人いる民主党副幹事長の一人が打ち明ける。「『土地改良予算は当面、農家に我慢してもらって半分にしよう、まず、マニフェストの農家の戸別所得補償制度を満額用意しよう』というのが、小沢さんの判断だ」

 土地連は土地改良政治連盟(土政連)を組織し、長い間、票と金を自民党に提供してきた。政権交代後も農水官僚OBが土政連をバックに、次期参院選に自民党から出馬しようとしたが、予算の大幅カットを受け、「当選する自信がない」と辞退した。

 予算減には戸別所得補償の財源確保と、自民党の集票組織を骨抜きにする“兵糧攻め”の狙いがある。副幹事長が続ける。

 「小沢さんは土地改良団体を『全然反省していない。民主党にチャレンジしている』と言っている。予算を減らしても反省のない態度をとり続けるなら、またガクンと落とそうという判断だ」

 三月二十九日朝、新潟県上越市の関川水系土地改良区事務局長の玉井英一は、農水省のホームページを見て胸をなで下ろした。同改良区の二地区に計六億四千万円の予算が付いたからだった。玉井は小沢に陳情したメンバーの一人。「割り当てを見る限り、陳情が考慮されているんじゃないかと思う」

 さらに新設の農山漁村地域整備交付金千五百億円のうち、新潟県は七十三億円が割り当てられた。一部は土地改良事業にも使える。やはり小沢に陳情した県土地連専務理事の大島洋介は「予想より多く、思いは通じたと思う。自分は自民党員だが、参院選は自主投票になる」と話した。

 兵糧攻めと予算付けという“ムチとアメ”の使い分け。小沢と側近らは予算配分権を武器に、自民党の“票田破壊”をもくろむ。

    ◇

 政官業が強固に結び付いてきた土地改良事業に、政権交代で大きな変化が生じている。政界の実力者が仕掛けた“利権争奪戦”の舞台裏を追い、「政争の具」と化しつつある事業を検証する。 (敬称略)

 

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