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【公共事業を問う】

【第二部】揺らぐ利権(2) ドンたちへ警告 役員兼業禁止で圧力

2010年4月8日

3月26日に開かれた全国土地改良功労者の表彰式。農林水産省の課長らを横目に、野中広務・全土連会長(左)は農相の欠席を批判した=東京都千代田区で

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 「本当に政権政党として安定するには、両院で単独過半数がなければならない」。昨年十二月、盛岡市内のホテルで開かれた「小沢一郎幹事長を囲む民主党躍進パーティー」。集まった千六百人の党員らは、小沢が夏の参院選の支持を訴えると大きな拍手で応えた。

 熱気に包まれた会場で、小沢は地元選出の参院議員平野達男にある提案をした。「政治家の団体役員の兼業禁止法案を検討してはどうか」。念頭にあったのは自民党の強力支持母体の農協や土地改良事業団体連合会(土地連)などの農業団体。同党の国会議員や県議らが会長や理事を兼ねるのを禁止する案だった。農林水産省のOBでもある平野が説明する。

 「小沢幹事長は『政権交代が起きたとき、農業団体がふらふらするのはおかしい。政治的に中立であるべきだ』という考え。選挙本位ではない」と述べた。だが参院選を控え、この小沢の提案は自民党に大きなダメージを与えることになった。

 農水省は一月中旬、各農業団体に政治家の役員就任禁止を求める局長通達を出した。農水省幹部は「年明けに赤松(広隆)大臣から指示があった」と明かした。土地連への通達には課長名の文書もあり、政党や候補者の推薦、政治献金、パーティー券購入など九項目の禁止も求めていた。

 「なぜこんな文書をもらわないといけないのか」。二月に東京都内で開かれた都道府県土地連の合同会議。全国土地改良事業団体連合会(全土連)会長は怒りに声を震わせた。

 会長は元自民党幹事長の野中広務。かつて最大の政敵だった小沢を「悪魔」と呼んだこともあった野中は、引退後も京都府土地連会長を務め、七年前に全土連トップに就いた。

 「もし小沢さんが、野中が気に入らんというなら、私は即刻会長をやめる。そして予算は全額復活してもらいたい」。土地改良予算の大幅カットを受け、野中は小沢に面会を断られたまま、打開策を見いだせずにいた。会議終了後、「農業が政争の具になっていることは悲しく思う」と言い残して去った。

 農水省通達を受け、石川県土地連会長の元首相森喜朗は「農家に迷惑をかけてはいけない」と任期を一年余して辞任。島根県土地連会長の元官房長官青木幹雄も辞めた。

 「今期限りと最初から言っていた」。青木は通達との関連はないとしたが、土地連と党との関係は「夏の参院選で、政界がどうなるか。それが終わらないと分からない」と言葉を濁した。

 「癒着を続けてきた政治、行政、経済の抜本的な改革を実行していきたい」。自民党で幹事長まで上り詰め、利権構造を知り尽くしている小沢は、冒頭のパーティーでそう力説した。癒着打破という大義名分の下、古巣に壊滅的な打撃を与えようと突き進む。 (敬称略)

 

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