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【公共事業を問う】

【第二部】揺らぐ利権(3) 削られる基盤整備費 政争の具農村劣化

2010年4月9日

千葉県北部6市町に広がる印旛沼土地改良区。築40年以上のポンプ場は老朽化が激しい=千葉県成田市で

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 「農林水産省から予算の個所付けが発表されました。一億五千万円です。おめでとうございます」。三月二十九日朝、千葉県佐倉市の印旛沼土地改良区事務所。総務課長の高橋修は地元の民主党衆院議員・奥野総一郎の秘書からの電話に、とりあえず安堵(あんど)した。

 東京ディズニーリゾート二十五個分の広さを誇る同改良区は、終戦直後から一九六〇年代にかけ、段階的に整備された。用排水路や水を吸い上げるポンプ場は老朽化が激しく、本年度からの九年間で大規模な改修工事を予定している。総事業費は三百三十二億円。農水省は初年度の調査費として二億円を要求したが、土地改良予算の六割カットで、改良区では「事業が先延ばしになるのでは」と不安が広がっていた。

 昨年のクリスマスイブ。同改良区理事長の清水豊勝らは東京・永田町の民主党本部を訪ね、樋高剛と山根隆治の二人の副幹事長に陳情した。「施設が老朽化し農家は本当に困っています」。樋高は幹事長の小沢一郎の秘書から政界入りした側近中の側近。前向きな回答を期待したが、十分間の短いやりとりで二人は「理解した」と答えるにとどまった。

 「老朽化した施設で最も心配なのは用排水用のポンプだ」。改良区の理事を務める農家の岩井滝雄は、一昨年の“悪夢”に思いをはせながら、施設更新の必要を訴えた。

 コメの収穫を控えた一昨年秋。台風による大雨で、田んぼが水浸しになった。ポンプ二機をフル回転して水を印旛沼に戻したが、途中で一機が故障。排水が追いつかず、稲穂が一週間冠水した。コメは商品化できず、多額の損害が出た。

 さらに修理費約三千万円は、施設維持のため改良区の農家から集める賦課金を充てた。昨年度の修理費は四千百万円と六年前の倍以上。「農家に転嫁してばかりいられない」と高橋は頭を悩ます。

 「ポンプ場や水路、水門は七〇年代に多く造られたが、耐用年数は四十年。これからは更新も必要だ」。東京・平河町の全国土地改良事業団体連合会。企画研究部長の阿武隆弘は危機感をあらわにした。阿武の見積もりで、更新費用は全国で年間五千億円。本年度予算は二千百二十九億円で、「これでは更新需要の何割も満たさない」と嘆いた。

 予算は付いたものの印旛沼土地改良区の改修事業の調査費は、概算要求から五千万円減額された。「二年目以降も減額が続くなら、事業の進ちょくに影響が出るだろう」。喜びにわいた事務所で高橋は一抹の不安を抱く。改良区でコメを作る七十代の男性は言う。

 「自民党は予算半減のような乱暴なことをしなかったが、農業を続けるためには、民主党の先生に頭を下げ、選挙でも投票するしかない」 (敬称略)

 <陳情一元化> 政権交代後、民主党は予算陳情の受け付けを党幹事長室に一元化し、必要と判断した場合のみ、各省庁の政務三役に伝えることにした。議員個人による官僚への接触は認めていない。自民党政権時代は、各自治体や団体が個別に国会議員や中央官庁を回って陳情した。族議員を中心とした政官業の癒着を防ぐのを目的とするが、小沢一郎幹事長の裁量権を強めた側面がある。

 

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