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【東京達人列伝】

薬品駆使し、衣服“補修” 染み抜きの『駆け込み寺』 市村勇さん

2009年2月2日

全国から舞い込む染み抜きの作業をこなす市村さん=町田市山崎町の鈴屋クリーニングで

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 町田市山崎町の「鈴屋クリーニング」。小さな店舗のカウンター裏に、想像もつかない実験室並みの薬剤、機材がびっしり並ぶ。化学者のように白衣をまとった男性がそれらを巧みに使い、衣服に向かう。「染み抜き達人」の経営者市村(旧姓波岡)勇さん(66)=同町=だ。

 「長年かけて築き上げた技術。落ちないものはないと思っています」。店頭に「しみぬき一一〇番」の看板。全国でも数少ない染色補正一級技能士の国家資格を持つ。国内の航空会社やアパレル会社など各地から依頼があり、「プロの駆け込み寺」としても知られる。

 ひと口に染みといっても、墨汁やコーヒー、口紅、血、油性ペン、ペンキなど原因はさまざま。時に、過マンガン酸カリウムや過炭酸ソーダといった爆発の恐れのある危険な薬品も使う。「突き詰めると、こういうの使わないと落ちないことが分かってきた」

 中には、二カ月以上かかるものも。一度に抜くと生地を傷めるため、消化酵素を使ったり、薬を毎日塗ったりして徐々に落とす。「絵の修復と原理は一緒。五年、十年たってるとそれだけ時間をかけないと落ちない。根気と経験がないとできない仕事」という。

 北海道出身で、元アマチュアボクシングの全日本チャンピオン。ローマ五輪候補にもなった。医学研究所職員などを経て畑違いのクリーニング業に飛び込んで約三十年になる。

 最初は染みと一緒に生地の色まで抜いて何度も弁償した。「悔しくて。どうやったら落ちるのかと。性分ですかね。ボクシングと同じように極めたいと思った」と振り返る。「同じ染みはないので、今も毎日が勉強」と研究を怠らない。

 「あきらめかけていたのに、こんなにきれいになるなんて」。依頼主からはしょっちゅう、感謝の手紙が舞い込む。「愛着のある衣服っていうのは、かけがえのないもの。お客さんが喜び、感動してくれるのは、仕事冥利(みょうり)に尽きます」と熱っぽく語る。

 業界の技術指導にも積極的で「後進の育成に力を注ぎたい」。背中を見てきた長男公一さん(25)が一昨年から、後継者として修業を始めたのが、一番の楽しみという。 (堂畑圭吾)

 

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