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【東京達人列伝】

都会で進化 強敵倒す ネズミ退治 谷川力さん

2010年1月18日

研究対象のネズミ。敵ではあるがかわいく思えるときも=新宿区で

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 谷川力さん(52)は、ネズミとつき合って三十年、街とネズミとの深い関係について知るネズミ退治の第一人者だ。イカリ消毒(本社・新宿区)の技術研究所所長でもある。

 「いま問題になっているのは、クマネズミ。都心のクマネズミは、殺鼠(さっそ)剤を食べない、食べても抵抗性があって効かない。警戒心が強くて、わなにもかからない」

 どうしてそんなネズミが現れたのだろう。「ネズミは二カ月で成獣になる。人間に追いかけられながら、淘汰(とうた)を受け、進化したのが今の都会のクマネズミ、つまりスーパーラットです」

 戦後しばらく、都会はドブネズミの天下だった。しかし高度成長期を経て、都会に土がなくなり、鉄筋コンクリートの高層ビルが林立するようになると、クマネズミに主役を奪われた。クマネズミは上に登るのが上手で、土から切り離された環境を苦にしない。

 殺鼠剤の主成分は、血を固まりにくくするワーファリン。人間にとっては、継続して摂取しない限り危険はなく、解毒剤があるため、誤って口にしても何とかなる。決め手のはずのワーファリンが、スーパーラットには効かない。

 だが、「スーパーラットにも弱点はある。神経質で繁殖力が弱くなっているようだ」と谷川さんはみる。退治には対策を総動員する。通路の遮断、スーパーラットでも食べてしまうよう工夫した殺鼠剤、えさを得られない環境づくりだ。

 おおかたの高層ビルは、ネズミ対策を考えて設計されてはいない。「大きい建築で二センチというのは誤差の範囲だそうです。でもそれだけすき間があれば、ネズミは入ってしまう」。谷川さんが建設中からネズミ対策にかかわった新宿の飲食店ビルは、築後十年たってもネズミが出現していない。半面、都心のある財閥系オフィスビルは、新築間もないのに、すでにネズミの足跡があったという。

 「よく見ると、ネズミはかわいい。絶滅させることはできないし、やるべきではない。でも不衛生であり、病気を媒介することもある。人間とネズミがすみわけ、被害をなくす方法を、これからも探し続けなくてはなりません」 (吉田薫)

 

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