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【金正男氏 単独インタビュー詳報】

弟正恩氏 父への忠誠心強い

2011年2月2日

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 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男・正男(ジョンナム)氏が一月中旬、中国で本紙の取材に応じた際の一問一答詳報は次の通り。昨年後継者に決定した弟の正恩(ジョンウン)氏や北朝鮮の経済情勢、核問題などについて触れている。 

 −北朝鮮の生活は豊かになったか。

 「外部から消息を聞いたところでは残念ながら、そういう感触を受けられないでいる」

 −北朝鮮は一昨年十一月末にデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を実施した。後継者の正恩氏が発案し、強行したといううわさがある。

 「デノミ自体は大変な間違い、失敗だと思う。しかし、弟が主導したという事実は知らないし、弟とは会ったことがない」

 −米国の機密公電などを暴露しているウィキリークスによると、あなたは通貨改革に反対したというが。

 「私は北韓(北朝鮮のこと)の政策に反対、賛成するという立場にはない」

 −正恩氏に伝えたいメッセージは。

 「父の偉業を継承して、住民がもっと豊かに暮らせるようにするのが願いだ。弟はそういう能力を持っているので、若くして父の後継者として選出されたと信じたい。住民に慕われる指導者になってほしい」

 「再度、延坪島(ヨンピョンド)砲撃のようなことがないよう北南関係を調整してくれるようにお願いしたい。さらに東北アジアの平和に寄与するよう、半島の北側で政治をうまくやってくれればうれしい」

 −正恩氏の経験不足を指摘する人もいる。

 「父に忠実で、忠誠心が強いのだろう。だから父が選んだと信じている。だれでも最初は経験不足だ。それは経験を積めばいいと思う」

 −後継について事前の相談はあったか。

 「私は北韓の政治に関係のない人間なので、相談する必要はないだろう。この点については自然なことだと受けとっている」

◆総書記とは直接話している

 −父親(金総書記)と話す機会はあるのか。

 「もちろんある。時々、直接話している。(総書記実妹の)慶喜(ギョンヒ)氏(朝鮮労働党軽工業部長)や、夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏(国防委員会副委員長)ともいい関係を保っている」

 −父親は二〇〇八年に病気になったとされるが、その後行動に変化はあったか。

 「答えにくい問題。理解してほしい」

 −今のあなたの仕事は。

 「それも答えられない」

 −北朝鮮と中国の関係は今後どうなるか。

 「朝中関係は昨日今日の話ではない。良い基調を維持するだろう。中国政府の幹部とは縁がない。中国には独自の情報網があるので、私に何か聞いてくることはない」

 −社会主義理念と世襲は矛盾しないか。

 「中国の毛沢東主席でさえ世襲をしなかった。そのため中国は発展したと言ってもいいだろう」

 −世襲のため、逆に北朝鮮は国力が落ちてしまうのでは。

 「(祖父、父に次ぐ)三代世襲は社会主義理念とは合わないと、私は以前も指摘した。父もそう言って反対していた。なぜ世襲になったかは分からない。そういう選択をしたのは、北韓としても内部要因があったと思う。体制の安全と円滑な権力継承を実現するため、三代世襲を行うしかなかったのではないか。何よりも重要なのは北韓内部の安全だろう。北韓の不安定は周辺の不安定につながる」

 −世襲により正恩氏への反感を持つ人間が増えないか。

 「どこのシステムにも反対勢力はいると思う。反対勢力が多数なのか、少数なのかが問題だ。個人的な考えだが、三代世襲者といっても、(住民の)潤沢な生活のため努力すれば、そして結果がよければ、反対勢力も減るだろう」

 −中国はなぜ三代世襲を認めたか。

 「中国は、他の国の内政に干渉しないのが原則だと思う。世襲を認めたというより、北朝鮮が自分自身で選択した安定的後継構図を支持したというのが正確だろう」

◆北「改革で体制崩壊」恐れる

 −北朝鮮は経済の改革開放を行うか。

 「個人的な考えだが、北韓の住民に豊かな生活をさせるには、改革開放が最善だと思う。関心を持つべきだ。ただ、北韓の特殊性を考えると、改革開放は体制崩壊につながるという恐れを持っているようだ。北韓が最も望んでいるのはアメリカとの関係正常化。半島での平和定着問題、その後経済を再建する方策をとるだろう。北韓が、米国・南韓(韓国)と対立している今、改革開放を期待するのは難しい」

 −核開発も続けるか。状況次第では核を放棄するか。

 「北韓の国力は核から出ている。米国と対立している今の状況が変わらなければ、核を放棄する可能性は少ない」

 −それではウラン濃縮も続けるか。

 「核保有国が外部からの圧力で核を放棄した例がありますか」

 −韓国では、昨年九月の後継決定に伴い、正男氏が第三国に亡命を計画した、あるいは暗殺されかかったとの報道が相次いでいる。

 「根拠のないうわさだ。身の危険を感じたことはない」

 −二〇〇一年の日本からの強制退去で自分や家族がマスコミに公開され、父親の怒りを買って後継者レースから脱落する原因になったと伝えられているが。

 「民主国家の日本としては、ああするしかなかっただろう。(同氏の通訳などに当たった日本政府関係者の実名を挙げた後)取り調べが行われた場所から強制退去のため空港に送られたが、乗せられたバスはカーテンが閉められており、安全には十分配慮してもらった。私は政治には関心がない。あの事件で私の運命が変わったということはない」

 −日本人拉致問題について。

 「遺憾な問題だ。今のように論議が平行線では解決できない。被害者に会ったことはない。最近、拉致被害者に関する情報管理が厳しくなった」

 (聞き手と写真=外報部・五味洋治。初報は一月二十八日朝刊に掲載)

 

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