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【彩の国 まつりごと】

【第十部】次への一歩<3> 北本市の市民税減税

2011年10月28日

減税を担当する北本市税務課=市役所で

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 「うちの減税額は年間三百円。恩恵って言われてもねえ」。JR北本駅近くの商店街で、七十代の男性商店主は困惑した表情を浮かべた。

 四月の統一地方選で行われた北本市長選。市民税減税を決めていた石津賢治市長(46)が再選を果たした。試算減税額は、納税義務者の平均で年間約一万円。男性は「高齢者や小さな自営業者は収入が少なく、減税額はわずか。それほど市は豊かなのか。減税より、買い物弱者の高齢者が頼れる商店街振興をして」と冷ややかだ。

 市によると、今春に納税通知書を送った後、市に寄せられた声は数件。賛同は二件、残りは内容の問い合わせなどで、市民の関心は低い。石津氏は「国の増税路線が続くので行政改革の成果を還元した。批判がないのは喜ばれているからでは」と自賛する。

 国から地方交付税をもらう交付団体としては、初めての減税。市幹部は「総務省からにらまれている」と漏らした。石津氏は「総務相に就任直前の片山善博氏から昨夏、お墨付きを得ていた。交付税は自治体固有の財源なので問題ない」とするが、同省は昨年十月、市民税を減税した自治体には前年より多い地方債発行を認めない方針を示した。

 減税をした北本市は、来年度の起債が県の許可制になった。減税の財源、行政改革の効果、市民税の納付率…。市は県に膨大な書類を提出。厳しくなった査定に、「減税が市政運営の支障になっていない」とアピールに追われた。

 認められる見通しの起債は約八億八千七百万円で、本年度から一千万円減る。起債額を減らす国の方針に沿いながらも減少額は抑えられ、市の担当者は「総務省との間に立ってくれた県に感謝しなければ」と胸をなで下ろした。

 河村たかし名古屋市長が地域政党「減税日本」を結成して選挙を戦った、地方自治体の“減税ブーム”はしぼみつつある。同市の市民税10%減税は恒久化案が否決され、一年限りに。同様に昨年度に実施した愛知県半田市も、地方交付税の交付団体になったことを理由に本年度は見送った。

 関西大学の林宏昭教授(財政学)は「名古屋市のように、財源の当てがないまま借金を増やし、減税するのは問題だと理解された。結局は人気取りだった」と指摘。ただ、地方交付税をもらっているのに減税するのか、という批判には「減税するかどうかは地方の自由。駄目というなら行政改革の意欲をそぐことになりかねない」と話す。

 政府は復興増税案をまとめ、消費増税論議も。「昨年とは状況が違う」と、役所内には減税継続は困難との見方も出始めた。石津氏は「税金をいくら払っているか、もっと関心を持ってもらいたいという狙いもある。決算と来年度の事業をみて判断する」と、継続に含みを残している。 (宮本隆康)

 <北本市の減税> 本年度の個人市民税を一律10%減税。昨年度の愛知県半田市や名古屋市に次いで全国3例目。2009年度決算の剰余金の約8億2000万円から、約3億7000万円を財源に充てた。減税額は年収600万円の4人家族で1万4400円と試算している。市民の半分の約3万4000人が納税義務者で、扶養家族なども含めれば8割近くに影響するという。市民税の均等割のみを納付していて、減税額が300円しかない市民は約2600人いる。

 

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